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世界の水産物貿易の流れと開発途上経済:貿易と生産の関係に見る洞察

水産物は、世界中の国々で貿易される食品の中で、最高価値を持つものである。水産物の価値は、砂糖、ともろこし、コーヒー、米、ココアを合わせた貿易価値を超えているのだ。ところで、この水産物取引にはどういう流れがあり、最も恩恵がいく先はどこなのだろうか。

Rashid Sumaila (OceanCanadaディレクター/ネレウスリサーチアソシエイト)とVicky Lam(ネレウスフェロー)が共著した “Global seafood trade flows and developing economies: Insights from linking trade and production” が、Marine Policyに掲載された。この論文の中で、著者らは、国が最も効果的に開発戦略計画と開発政策を立てられるように、海洋資源開発の包括的理解を得ることを期待して、捕獲国、生産国、消費国までの国際水産物の流れを追跡した。

この研究により、低所得国では高価な水産物を輸出し、安価な水産物を保有するということがわかった。 Image: “Mabalacat – Magalang Road, Mabalacat, Philippines” by Avel Chuklanov.

この研究により、低所得国では高価な水産物を輸出し、安価な水産物を保有するということがわかった。
裕福な国々は水産物を輸出するより輸入するので、先進国では水産物資源がより蓄積する傾向にあることがわかった。一方で、開発国では、貧困を和らげ、食糧安全保障を達成し、貿易を通して持続的な経済発展を促進するために、目に見えて大量の水産物を輸出している。このように、水産物市場は、開発途上国にとっての重要な収入源でなくてはならない。しかし、水産物輸出国は、世界経済の中で国際貿易に過度に依存しているため、こういった国々が経済的ショックや市場脆弱性にさらされる可能性がある。アクセス協定は、経済安全保障を達成するための包括的な目標に取り組むために、沿岸部の資源豊富な国にとって必然的にもう一つの選択肢となる。

生産国から消費国への漁船ネットワークを把握することは、国家開発において、貧困軽減と食料安全保障に対して顕著な影響を与える。 Image: “Fishing Fleet” by John Lord, CC BY 2.0.

要約
海洋資源開発のパターンと水産物貿易を知ることは、国々が将来の戦略計画と開発方針を立案する際に役立つだろう。これらのパターンを完全に理解するために、利益がどこに集中し、どのようにバランスをとっているのか、時間の経過とともにどのようにパターンが進化しているのかを把握する必要がある。ここでは、新しいアプローチとデータベースを使用し、捕獲された場所や生産された場所から消費される国まで、世界の水産物の流れを追跡した。1950年代から2010年代にかけ、公海漁業を含む漁獲量から、アジア漁船の支配力が増していることを示している。1950年代は、高所得国の漁船は自国の海からの漁獲量が大部分だったが、異なる所得水準を示す漁船によって漁獲量と価値がより均等になり、2010年代にパターンが大きく変化した。結果は、国の所得が高いほど、輸出に比べて高価な水産物をより多く輸入しており、逆もまた同様であることを示している。理論的には、貧困を解消するという大目標を達成するために、低所得国が高価な水産物を輸出していることを意味していると同時に、価値の低い水産物を保持し輸入することで食料安全保障を目指している。先進国と開発国間のアクセス協定に関して、これらの変化する収入源を洞察することで、貧困軽減や食料安全保障のような目標を結果としてもたらすかもしれない。

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