By Matilda Petersson, Nereus Program Fellow at Stockholm Resilience Centre
世界の海は、何億人もの人々の生計を支え、食料と栄養の安全保障をもたらし、また多くの国々や世界中の沿岸コミュニティーの雇用、経済開発や輸出による収入源としても重要なものである。しかしながら、これらの重要な生態系と漁業資源の状態は、何十年にも及ぶ持続不可能な搾取、過剰設備、ガバナンス介入の失敗により、急速に悪化している。気候変動や海洋温度の上昇により、すでに難しい状況がさらに複雑に、また不明確になっており、海洋酸性化、サンゴの漂白、魚の移動パターンの変化といった影響が目に見えてわかるようにもなってきている。
同時に、今日、国際社会では、世界の海の持続可能性を高める動きに勢いが出てきている。今年の6月5日から9日にかけて開催される、ハイレベル国連海洋会議は、国際的に合意された持続可能な開発目標(SDGs)の実施に重きを置く最初の会議となるだろう。この会議の包括的テーマは、海でのSDG number 14の実施のために、政府、市民社会、民間部門を代表する幅広い活動者を集め、パートナーシップを確認し、構築し、支援することである。
以前は、拘束力のある国際条約の交渉をする各国政府に焦点を当てていたが、パートナーシップに焦点を当て、市民社会と民間を巻き込んで取り組む最近の動きは、環境問題を取り巻く国際協力の発展を表している。市民社会や民間団体の活動者が、疎外されたグループの参加者を呼び込むことができるので、既存の知識、資料、情報を補足し、政府と国連機関が定める規制と実施のギャップを埋めるため、この変化が、環境問題の解決策を見出すために大きな可能性を秘めていると考えられている。また、パートナーシップは責任を負うのが難しく、SDGsの実施の補償なしに、国際政治で既に力を持つ活動家たちに権限を与える可能性もあるので、国際条約の方が好ましいという考え方もある。
私の考えでは、喫緊の課題は、持続可能な開発のためのパートナーシップが増えつつあることを考えれば、どのアプローチが適切であるかということではない。いかに海の環境問題について効果的な解決法を最大限提供しているかをを確認できるかが重要であり、それゆえ、国連会議は、パートナーシップとして最善の実践法と成功要因を特定しようとすることを奨励している。したがって、私たちは、以前の失敗例や既存のパートナーシップにおける成功していない側面から学ぶ方法や、既存のギャップを埋めるためにパートナーシップの可能性を高める方法を考察する必要もある。
パートナーシップは、気候変動の影響を受けると予想される開発途上国のニーズを考慮する必要がある。
南半球にある開発途上国やコミュニティー、漁師や先住民グループからの活動家たちは、あまりパートナーシップの代表となっていない。パートナーシップを成功させるためには、そういった人たちを積極的に巻き込んでいく必要がある。熱帯域は気候変動に特に脆弱であると予想されており、環境にかなり影響を受けやすいことや、この地域の多くの国々は、こうした変化に対処するためのガバナンス能力に限界があることを考慮すると、特に重要だと言える。さらに、世界の漁獲量の大部分が開発途上国での小規模漁業によるものであるため、持続可能な漁業の認定に関わるパートナーシップなどは、その地域で漁業に関わる人たちに、漁業認定を受ける動機を与える必要がある。持続可能な漁業と健全な海を取り囲む効果的な国際協力を可能にするために不可欠である。
さらに、パートナーシップを成功させるためには、これまでに持続可能な漁業資源や健全な海を維持するために、各国政府が整備できなかった規制、政策分野、実施、これらにおける既存のギャップに対処する必要がある。しかし、既存のパートナーシップの多くは、既存の国際条約や規則といった既にたくさんある主に政策分野について取り組んでおり、補完的な役割に思われる。それゆえ海洋会議は、十分な措置が取られていない地理的および政策分野でのパートナーシップに焦点を当て、SDG-14 の実施を妨げている最も重要なギャップを比較することについて議論する素晴らしい機会となるだろう。そして、現在取り組みが行われているこれらの分野において、パートナーシップが、政府や他のパートナーシップのこれまでの努力を最良の方法で補完できるだろうか。
国連海洋会議は、SDGsに対処すべく初めて開催されるものであり、この会議とその成果は特に重要となる。今ある勢いを利用して、他の同様の会議を先導し、これらのSDGの実施を前進させることができるだろうか。
5月31日、ネレウスプログラムは、“Oceans and the Sustainable Development Goals: Co-Benefits, Climate Change, and Social Equity(海と持続可能な開発目標:コーベネフィット、気候変動、社会的平等)”という報告書を発表する。また、ネレウスは、6月9日の国連会議でサイドイベントを開催する。
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MATILDA PETERSSON, MSC, SOCIAL-ECOLOGICAL RESILIENCE FOR SUSTAINABLE DEVEOPMENT
Stockholm
ストックホルム
マチルダ・ピーターソンは、環境政治学を専門とする。彼女は、世界の海洋資源管理に関して、どのようなガバナンスの仕組みによって効果的な管理ができるかという課題について研究をおこなっている(博士過程)。マチルダは、以前、地域漁業管理機関(RFMOs)における、非国家主体間の多様性と参加型パターンを調査し、UNFAO (漁業水産部門)で国際コンサルタントとして、またEnvironment, Fisheries and Maritime AffairsのEU政府でも経験を積んでいる。