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気候変動による漁業の損失が、2050年までに年間100億ドルに及ぶ可能性

気候変動が現在の速度で進んだ場合、世界の漁業は2050年までに、およそ年間100億ドルの損失を被る可能性がある。それにより、漁業を食料源や生活収入の糧としている国々では、さらなる影響を受けるだろうことを指摘した日本財団ネレウスプログラムの研究論文がScientific Reportsに発表された。

UBC’s Institute for the Oceans and Fisheries による以前の研究から、気温の上昇や海の塩分濃度の変化、酸性化、酸素レベルの変化に見られる気候変動が、漁獲量の減少を招くことが予測されている。今回の研究論文では、著者たちは、2000年と比較した上で、2050年に全ての漁業国において予想される損失の財政上の影響を調査した。

「漁業を食料源や生活収入の糧としている開発途上国は、最も酷い打撃を受けるだろう。気候変動への資源抵抗力を増加するためのより良い海洋資源管理計画を施行する必要がある。」とこの研究の執筆者であるVicky Lam(ブリティッシュコロンビア大学/ネレウス同窓生)は話す。

Image: Fish Market by Ruocaled, CC BY 2.0.

高い二酸化炭素排出量のシナリオ下では、世界の漁業収益が10%減少することが試算される。Image: Fish Market by Ruocaled, CC BY 2.0.

多くの国々が、漁業損失の財政負担を軽減し、気候変動下で食糧安全を改善する解決策として、養殖業を検討している一方で、研究者がこの成長途上のこの産業を調査してみると、収益減を悪化させる可能性があることがわかった。

「養殖開発のような気候適応プログラムは、解決策として期待されるかもしれない。しかし、漁業損失の財政負担を軽減し、食糧安全を改善するというよりは、むしろ水産物の値段を下げることとなり、漁業収益のさらなる減少につながる可能性がある。」と共同執筆者であるWilliam Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学)は説明する。

研究者達は、二通りの二酸化炭素排出シナリオ下で、気候変動がもたらす漁業資源や漁業収益における経済影響を調べるために、気候変動に関する政府間パネルの気候モデルを使用した。排出濃度の高いシナリオ下では海洋温度は上昇し続け、逆に低いシナリオ下では海洋温暖化が2℃以下に保たれる。

Image: Tuna for sale at Auki market, Malaita Province, Solomon Islands. Photo by Filip Milovac., WorldFish, CC BY-NC-ND 2.0.

多くの先進国で収益増加が予想される一方で、食料や収入として漁業が生活の糧となる開発途上国は最も酷い打撃を受けるだろう。ソロモン島マライタ州アウキマーケット売買されるマグロ。 Image: Tuna for sale at Auki market, Malaita Province, Solomon Islands. Photo by Filip Milovac., WorldFish, CC BY-NC-ND 2.0.

「世界の漁業売上収益は、毎年およそ1000億ドルに達する。我々のモデルによると、二酸化炭素の排出量が低いシナリオ下では、7%までの収益減少が予想される一方で、高いシナリオ下では、平均10%まで世界の漁業収益が減少する可能性がある。」と共同筆者である Rashid Sumaila教授( ブリティッシュコロンビア大学Institute for the Oceans and Fisheries and Liu Institute for Global Studies)は話す。

また、タケラウ、ケイマン諸島、ツバルのような、生活のために魚を当てにしている国々は、最も脆弱性が高いこと、その一方で、グリーンランドやアイスランドのような先進国の多くは、魚がより冷たい海へと移動するので収益が増加する可能性があることを示した。

この研究は、Scientific Reportsで発表された。
その他著者Gabriel Reygondeau(ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスフェロー)

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