移動する海洋生物種:アメリカ水産学会シンポジウム
8月20日から24日にかけてフロリダ、タンパでアメリカ水産学会年次総会が開催された。そこで行われた “Marine Species on the Move” シンポジウムで、ネレウスプログラムの研究が注目された。このシンポジウムでは、海洋環境の変化と気候変動によりアメリカの魚資源の空間分布が変化している現状に関して、情報共有のギャップと適応戦略の可能性が議論された。
8月20日から24日にかけてフロリダ、タンパでアメリカ水産学会年次総会が開催された。そこで行われた “Marine Species on the Move” シンポジウムで、ネレウスプログラムの研究が注目された。このシンポジウムでは、海洋環境の変化と気候変動によりアメリカの魚資源の空間分布が変化している現状に関して、情報共有のギャップと適応戦略の可能性が議論された。
5月10日から14日にかけ、Environmental Drivers of Fishing Effort Workshopがハリファックスのダルハウジー大学で開催された。ネレウスからは、William Cheung (ネレウスディレクター・科学/UBC)、 Pat Halpin (ネレウス研究責任者/Duke)、 Derek Tittensor(ネレウスリサーチアソシエイト/Cambridge/UNEP-WCMC)、Daniel Dunn (ネレウスフェロー/Duke)、 Guillermo Ortuño-Crespo (ネレウスフェロー/Duke)、Gabriel Reygondeau (ネレウスフェロー/UBC)、Vicky Lam (ネレウスフェロー/UBC)が出席した。
燃料使用が気候変動に加担しているということは周知の事実だが、気候変動によって漁業における燃料使用量が増加する悪循環も考えられる。海洋温暖化のため、魚の分布が移動しているからである。この燃料使用量の増加と価格上昇により、小規模の零細漁業者は、気候変動下で生活を維持し、家族を養うのが厳しくなるだろう。
西アフリカは、気候変動に最も脆弱な地域となる可能性がある。この地域では、生計をたてたり、重要な食糧源を確保するために漁業に依存するところが大きい。現在、西アフリカの海洋資源は、乱獲や気候変動(気候変動に起因する海の温暖化により、その海域の魚資源がより冷たい海へ移動する)に脅かされている。ネレウスプログラムの研究によると、二酸化炭素排出量が現在のレベルで推移する場合、この地域では漁業関連の雇用は50%減少し、年間総損失は3億1,100万ドルになると見込まれている。
メキシコにおけるスペインの統治とその後の先住民統合政策に抵抗した先住民セリ族は、メキシコ北西 部の乾燥気候にある先祖代々の沿岸および海洋領土の一部に対して、ようやく正式な権利を得た。彼ら の生計は海の資源に維持されてきたが、現在は魚資源の減少により外部との競争と戦わなければならな くなっている。」とYoshitaka Ota(ネレウスディレクター・政策)とAndrés Cisneros-Montemayor(ネレウスプログラムマネージャー)はThe Conversationの中で記述している。
植物プランクトンは、ほとんど全ての海洋生物にエネルギーを供給する根幹を為す。植物プランクトンの量により、その海域で捕獲できる魚の生息量を予測できそうに思うかもしれない。しかし、ネレウスプログラムの研究者による新しい研究では、この関係はそれほど単純ではないことを示している。
Scientific Reports に掲載された研究によると、2050年までに漁業に年間100億の損失が起こりうることことが分かった。Vicky Lam(ネレウス同窓生)、William Cheung,(ネレウスプログラムディレクター・科学)、Rashid Sumaila(OceanCanadaディレクター)、Gabriel Reygondeau(ネレウスフェロー)によって執筆された。この研究は、以下のメディアで紹介された。
気候変動が現在の速度で進んだ場合、世界の漁業は2050年までに、およそ年間100億ドルの損失を被る可能性がある。それにより、漁業を食料源や生活収入の糧としている国々では、さらなる影響を受けるだろうことを指摘した日本財団ネレウスプログラムの研究論文がScientific Reportsに発表された。