Languages

ニュース

移動する海洋生物種:アメリカ水産学会シンポジウム

8月20日から24日にかけてフロリダ、タンパでアメリカ水産学会年次総会が開催された。そこで行われた “Marine Species on the Move” シンポジウムで、ネレウスプログラムの研究が注目された。このシンポジウムでは、海洋環境の変化と気候変動によりアメリカの魚資源の空間分布が変化している現状に関して、情報共有のギャップと適応戦略の可能性が議論された。

Becca Seldenは、捕食者と被食者の相互作用の研究について議論した。

Vicky Lam(ネレウスフェロー/ブリティッシュコロンビア大学)は、温暖化に対する社会生態系システムの総合的な反応を考慮することの重要性を強調した。特に、魚の分布が移動しているため、需要が高まる一方で魚の供給量が減少し、更なる魚獲圧力を誘発する可能性について述べた。

Becca Selden(ネレウスフェロー/ラトガース大学)は、アメリカ北東大陸棚での温暖化による捕食者と被食者の相互作用への影響を説明した。彼女は、温暖化は利用可能なタラの生息域を圧迫し、生態系における機能的役割を制限するという研究結果を発表した。しかし、同時にアブラザメのような温水捕食者がこの損失を補うかもしれないとも述べた。この研究についての詳細は、Global Change Biologyに最近掲載された論文に記述されている。

Rebecca Asch(ネレウス同窓生/イーストキャロライナ大学)は、種と環境の関係が空間や時間によって異なる場合において、種分布モデルの使用に関わる重要な事項を提起した。彼女の研究は、移動性の高い生物は環境の変化により上手く対応することを示唆しているが、同時に非定常性は将来の範囲変更を予測する際に考察すべき重要な要素である。

William Cheung (ネレウスプログラムディレクター・科学)は、シンポジウムの基調演説として、気候変動が世界中の漁業コミュニティの漁獲に及ぼす潜在的影響を明確にし、気候変動の影響に対処するためにできる様々なスケールでの対応策を概説した。特に赤道周辺国の間で、パリ協定の1.5度の目標を達成する多大な利益があることを強調した。海洋保護区は、回復力に寄与する可能性はあるが、その「耐久性」を考慮するために、管理者は種の分布の移動を考察する必要がある。

この2日間のシンポジウムは、ネレウスの科学者が行った研究を、学者、政府、NGOの科学者や政策立案者に紹介する素晴らしい機会となった。

Comments