西アフリカは、気候変動に最も脆弱な地域となる可能性がある。この地域では、生計をたてたり、重要な食糧源を確保するために漁業に依存するところが大きい。現在、西アフリカの海洋資源は、乱獲や気候変動(気候変動に起因する海の温暖化により、その海域の魚資源がより冷たい海へ移動する)に脅かされている。ネレウスプログラムの研究によると、二酸化炭素排出量が現在のレベルで推移する場合、この地域では漁業関連の雇用は50%減少し、年間総損失は3億1,100万ドルになると見込まれている。
西アフリカ地域漁業プログラムは、西アフリカ漁業のガバナンスを改革し、沿岸における貧困をなくすために世界銀行と準地域漁業委員会によって設立された。2017年2月13日から17日にかけ、セネガルのサリーで開かれた地域ワークショップにネレウスプログラムのフェローVicky Lam (UBC) と Muhammed Oyinlola (UBC)が参加し、西アフリカの気候変動や水産養殖分野についての研究成果を発表した。
西アフリカ地域漁業プログラム(以下WARFP)は、西アフリカで守られる漁業資源や西アフリカにもたらされる利益を維持、増加させるために国々を支援することを目的とした、多国籍で複数期に渡るプロジェクトとして構成されている。このプログラムの主な目的は、特にこの地域における貧困層の減少と食料安全保障の利益に重点を置いている。
ワークショップには、WARFPの第1期に参加した8か国の政府代表、開発パートナー、地域漁業団体、第2期で加入した国(ガンビア、コートジボアール)を含むおよそ60人が参加した。この会議の最初の2日間では、WARFPの第1期の進捗状況、経験によって得た知識について論評し、違法漁業の撲滅、対象となる漁業管理のためのガバナンスの強化、魚製品にその地域の付加価値をつけることに焦点をおいた。このワークショップの目的は、プログラムの第2期に向けての準備につなげるべく経験からの助言をまとめることであった。
WARFPの過去5年間の活動で、違法、無報告、無規則漁業(IUU)がリベリア、シオラレオネで減少してきている。また、沿岸および小型の遠洋漁業を管理するために、国際政策や法律を策定している国もある。この地域の全体的な漁獲レベルは、WARFPの第1期が始まってから数年に渡り停滞し続けている。
Vicky Lamは、気候変動による西アフリカ漁業への影響についての予測を発表した。使用されたモデリングアプローチの概要を説明した上で、2050年にこの地域のそれぞれの国において、漁獲可能性、漁業供給量、魚のタンパク質量、地価、漁業関連の仕事が気候変動により減少する可能性を示した。Lamは、ネレウスプログラムが懸念している違法漁業の例や、海中養殖の潜在的可能性についても紹介した。ネレウスプログラムでは、違法漁業に関して、 監視の優先順位を決め、沿岸沿いの監視を数値化するためにGlobal Fishing Watch のデータを利用した。また、Muhammed Oyinlolaは、海中養殖の実現可能性を査定する準備作業二つについて発表した。この発表では、気候変動や他のストレス要因下での漁業の課題に取り組む方法を提案した。
参加者達は、気候モデル、モデルに必要なデータの種類、沿岸種の空間分布への理解、これらの種の分布の変化による漁業への影響について特に興味を示した。彼らはまた将来の分析において、気候変動による内陸漁業および河口漁業への影響を含めることを提案した。
参加者のためのトレーニングワークショップが最後の3日間に行われた。研修のテーマには、漁業サービスの貿易(TIFS)やこのプログラムのモニタリングや評価プロセスがあがった。モニタリングと評価ワークショップでは、参加者達は、プロジェクト開発目標 (PDO) やPDO指標、構成要素、中間指標の識別を中心にフレームワークの開発方法について研修した。その後、構成要素による国別および地域別の活動をまとめ、後にファシリテーターに見直してもらった。簡潔にまとめると、最後の3日間は、WARFPプロジェクトの目標、第2期の準備のために参加者の技能を磨くのに費やされた。