ウィリアム・チュン(ネレウスプログラムディレクター/科学)とガブリエル・レイゴンドー(ネレウスフェロー/UBC)の共著、The Southern Oceanの一章が、Ocean and Climate Platform’s Scientific Notesに掲載された。 Ocean and Climate Platform(海洋と気候のプラットフォーム)とは、ユネスコの支持を受けるNGO団体と研究機関の連合体である。
要旨:
南極海は、どの産業や人間活動からも、最も離れたところにある。しかし、ここ数十年、多くの観測者たちによって、在来生物だけではなく生態系に大きな変化が起こっていることが報告されている。これらの障害は、間接的に(温暖化、海氷の変化、オゾン層の破壊、酸性化)または直接的に(生物資源の漁業搾取)、人間活動の結果と繋がっていることがほとんどである。これら負荷の大きさは、南極海の海域によって様々である。多くの人々は、南極海に多様性はないイメージをもっているが、9064種以上確認されている南極海の生物地理アトラス(De Broyer et al., 2014)によると、実際はそうではない。観測された障害が、これらの生態系や栄養網の機能を変えてしまうことが予想されている。また、沿岸種から深海種、凍ることがない亜南極海から海氷で覆われた海域、遠洋種と底生種の生息地での低次から高次捕食者の変容を懸念している。一般的な例として、程度は違えどどの大陸でも観測されている、南極半島周辺の流氷の状態変化が挙げられる。それでも、この氷はナンキョクオキアミのような、鳥や海洋生物を含む多くの種の基礎食糧であるバイオマスを維持し、そのライフサイクルを完成させるのに不可欠である。そのため近年見られる氷山や大型棚氷の崩壊は、底生動物群衆に多大な影響を及ぼすことが分かっている。南極海の北堺にある亜南極地域では、気候変動による影響が最も顕著に見られるであろう。また、34億年間に渡り、極端な状況に適応してきた海の生物多様性が、これら新しい状況にどのように対応できるかを推測することが重要である。