Languages

ニュース

ウィリアム・チュン 、中国厦門湾の食物網と漁業に関する論文が掲載される。

ウィリアム・チュン(ネレウスプログラムディレクター科学担当、研究責任者)中国海洋地域に関する二つの論文が掲載された。これらは、漁業が海の食物連鎖段階と構造に与える影響についての考察を含んでいる。

Impacts of fishing on the marine mean trophic level in Chinese marine area” は、Acta Ecologica Sinica に掲載された。

要約:

漁業による海洋MTL(平均食物連鎖段階)への長期的影響についての研究は、海洋生態系の状況を把握するためにとても重要であり、有用な保護管理戦略の計画を立てる際に役立つだろう。我々はFAO( 国際連合食糧農業機関)漁業統計データ( FishStatJ_2.0.0_win32, 1950 to 2011)が示す水揚げ量のデータを用いて、中国海域で水揚げされる51魚種/グループの変化とMTLへの影響を分析した。

そして、次のような結果を得た。中国の水揚げ量は1950年から1977年にかけ、0.72 × 106 t から3.29 × 106 t へと徐々に増加。1981年から1998年の間に2.74 × 106 t から13.21 × 106 t へと急激にその量を増やした。その後、2002年に12.00 × 106 t に減少、2008年まで比較的安定した状態を保ち、2009年から2011年の間に12.86 × 106 t に再度増加した。栄養段階が3.5以上である水揚げされた魚種・グループの割合は、1975–1977年ではおよそ28%、1979–1981年には17.1%に減少、また1979–1981年には27.00%に増加、1982–1988年に24.57%から13.64% に減少、1997年には19.43%あたりを変動、そして1997年から2011は着実に35.8%まで増加している。

中国のMTLは、1950年から1974年にかけては安定しており、およそ3.45にわずかに変動、1975–1978年に3.35に下がり、1979–1981年には3.45にあがっている。しかしながら、MTLは、1982–1987年に3.25へ急激に下がり、その後10年はその状態のままであった。MTLの低下率は、1950–1997年の間で、10年ごとに0.05。1997年から2011年にかけて、3.34へと徐々に上がり、上昇率は10年ごとに 0.12であった 。中国海域の 漁業平衡指数は1950年から明確に増加傾向を示した。その傾向は1959年以降0.5以上であった。そして、1995以降は1以上に上がった。 MTL の変化は、全水揚げの魚種・グループの構成に密接に関係していた。これは、タチウオ、キグチ、フウセイ、イサキ、ムロアジのような、特にMTL3.5以上の魚類・グループに顕著に見られた。

このMTLが全般的に下がる傾向は、水揚げされた多数の魚が、長命で高いMTLを示す底生魚(例:タチウオ)から短命で低いMTLの無脊椎深海魚(例:ムロアジ)に変化したことを示している。1997年から2011年にかけて中国でMTLが上がった理由として、水産修復のために海洋保護区域が制定され、禁漁期や禁漁区域を定めるなど一連の漁業管理対応策が整備されたことが挙げられるだろう。また、統計水揚げデータと生物種豊富度を示すデータを利用した際、 MTL が異なることもわかった。もしかしたら、それは漁業統計の数字の出し方に影響されているのかもしれない。さらに、不変であると想定している生物種の栄養段階が、時を経て変わっているかもしれない。 MTLへのこれらの影響は、今後探求されるべき課題である。

 

Fig. 1.  The changes of fishery landings in China's offshore (1950–2010).

中国沖合での水揚げ量の変化(1950–2010).

また、 “Comparing trophic structure of a subtropical bay as estimated from mass-balance food web model and stable isotope analysis” が、 Ecological Modelling に掲載された。

要約:

台湾海峡の亜熱帯湾の栄養構造を、Ecopath(質量バランスモデル)とSIA(安定同位体分析)の二つの方法を使用し分析した。この二つの方法から推測されたTLs(栄養段階)の 主な機能群 を比較した。Ecopathモデルは2009年に 厦門湾で水産資源調査に基づき作られた。特に、生物種構成、バイオマス、死亡率、食物組成、漁獲量のデータが、湾やその周辺における調査から得られた。このモデルは、プランクトン、底生生物、魚、頭足類、エビ、カニ、海産哺乳類を含む、26の機能群 から成る。 TLs の 主な機能群は、平均が 3.11で、2.89(頭足類)と3.94(アナゴ)の間であることが推測される。 栄養転送効率は、それぞれレベル2(12.8%)、レベル3(19.2%)、レベル4(19.7% )、レベル5(12.1%)である。ナマズ( コウライギギやオオサカハマギギ)や水産業は、 厦門湾生態系のほとんどの機能群の栄養に大きく影響を与える。トータルシステムスルートップは、 411 t km−2year−1となることが推測される。 SIAから推測された TLsは、Ecopath (Linear regression: R2 = 0.696, n = 23, p < 0.001)から推測されたTLsと大いに関係する。 SIAから推測されたTLsと比べて、Ecopathから推測される機能群のTLsは平均して12.2% ぐらい低かった。 Ecopathから得たTLsは、低次TLsがわずかに高く、高次TLsが低かった。この研究では、食物連鎖を分析するためにSIAとEcopathの両方を使用することが重要であるということを示すこととなった。

REQUEST ARTICLE

Comments