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深海:最後のフロンティアを守るためのモデリング


厳しい深海環境に生息する巨大なチューブワーム(リフティア‐パキプティラ)

沿岸漁業および海面漁業が枯渇し、漁師は魚を求めて深海に向かうため、科学者は発見されていない深海の生息地を見つけて保護する革新的な方法を模索している。.
Written by Kisei R. Tanaka, Nereus Research Fellow

深海:海面から200メートル下の、深く、広大で、遠く離れた環境であり、海の生息地のほぼ3分の2を占める。そこには、写真右の熱水噴出孔を持つチューブワームなどの非常に特殊で繊細な生き物が群生している。これらのワームは、噴出孔から出る硫化水素の毒に耐えうる繊細な生態系の一部である。

このような複雑な深海群集は、海面および沿岸での漁業を促進する生物多様性のホットスポットである。これらの孤立した生態系を研究することは危険であり費用がかかる。内的な働きの多くは、未だ科学者に解明されていない。それにもかかわらず、深海種の商業的利用は加速している。沿岸漁業と棚漁業は、ここ数十年、減少傾向にあり、漁業は最後のフロンティアとして深海へと向かいつつある。

深海漁業は信じられないほど破壊的行為となるだろう。網、鎖、その他重機を海底で引きずる底引き網漁が良い例だ。深海漁業やその他の漁業により、ほとんどの生命体が除去され、構造も破壊され、深海の生態系に修復不可能なダメージが与えられる可能性がある。その他の生息地は回復するかもしれないが、深海種は他に類を見ないほど脆弱なのだ。

とても暗く冷たい環境に生息するため、代謝が遅い。多くは、寿命が長く、成長率が遅い。これは、海洋全体の中でも、子孫の産生が少ないことを意味する。論理的には、深海群集の多くは生産性が低く、乱獲、汚染、沿岸開発、外来種、及び気候変動の脅威により影響を受けやすい。沿岸漁業と海面漁業が枯渇し、世界的に漁師が魚を求めて深海へと向かっているので、繊細な深海の生態系を保護できるように効果的な計画が必要とされているのだ。

この目標を達成するために、未知なる深海の生息地を突き止め保護する必要があり、科学者や保全活動を行う人々が革新的な方法に取り組んでいる。種分布モデル(SDMs)、または空間や時間で種分布を予測し分析できるコンピュータアルゴリズムを使用することで、科学者たちは未発見の深海生息地が世界中のどこに存在するのかを特定できる。

深海の種が潜在的に生息する可能性のある地図を作成するために、科学者たちは、種の出現/存在(すなわち、好む場所、見つかる可能性が高い場所)および周囲の環境に関する既存のデータについて既にわかっているものを使用する。

私は、生物多様性条約(生物多様性の保全と持続可能な利用を促進するための条約)が主催するワークショップに出席した。そこには、世界のSDM専門家たちや深海生物学者が、深海生息地をモデリングするための適切なデータや方法を話し合うために集結した。

このワークショップでは、ATLAS(複雑な海洋生態系の理解を深めることを目指すプロジェクト)また SponGES(深海の海綿動物の生態系を保護するための生態系に基づくアプローチの開発を試みる研究プロジェクト)から海洋種に関連する生物学的および環境的データセットが集められ、データが制限された深海環境における最新のSDMアプローチが紹介された。

これらの分野横断的ワークショップは、科学者にとって非常に貴重な経験となる。多くの科学者が、研究結果を管理のために使用できるような科学的アドバイスへ変換することがいかに困難かを理解するため、できるだけ「現実的な」結果を出すように努めている。例えば、長時間モニターを見つめ、SDMsへ思考を巡らせた後、ある漁師に「モデル」とは何かと定義を尋ねられた際、私は、10秒間沈黙してしまった。

このワークショップでは、巨大なデータセットとそれを扱う多様な科学者を結集することで、深海モデリングコミュニティ内で効果的な共同研究が可能となる。コラボレーションすることで、保護が必要で生態学的に重要である深海域を特定できる、より確固たるSDMにつながる。

Convention on Biodiversity Workshopに参加した科学者たち

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