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公海を遊泳する海洋魚種を理解する:海洋の移動接続性MiCOシステム

By Guillermo Ortuño Crespo, Nereus Program Fellow at Duke University

移動性の魚、海洋哺乳類、海鳥、ウミガメなどの種は、広い範囲で遊泳するため、様々な増加傾向にある人為的圧力に直面する。ライフサイクルの空間的接続性を全く考慮していない保全戦略に加え、気候変動、乱獲、海洋汚染を含む脅威により、結果として世界中でそれらの個体数が減少している。

移動性サメ類やカメ類は、太平洋島嶼国に住む人々にとって文化的に重要であり、また、渡りザトウクジラは多くのカリブ諸島でホエールウォッチング産業の要となっている。そして、大西洋クロマグロのような移動性魚類は、何世紀にも渡って地中海漁業の柱となっている。これらの種が国家管轄権外区域をどのように移動するのかを理解することは、国境を越えた保全と管理に不可欠であり、世界中で沿岸国家との社会経済的、文化的、生物学的関係を維持することにつながる。

ホエールウォッチングは世界中の旅行産業を支えているが、他種との移動接続性における情報が欠けている。 Image: ©Doug Kaye, CC BY-NC-ND 2.0.

国家管轄権外区域を含む多くの海洋空間計画イニシアチブによって提案される、公海での移動の接続性に関する知識に大きなギャップがあることは明らかである。デューク大学Marine Geospatial Ecology Labは、Migratory Connectivity in the Ocean (MiCO)システムの開発を先導している。

MiCOは、公海での地域ベース管理に情報を提供するためのドイツの International Climate Initiative からGlobal Ocean Biodiversity Initiativeへ充てられた大きな補助金の一部である。またMiCOは、国家管轄権外区域を遊泳する種の移動の接続性についての幅広い知識を収集し、必要に応じて統合する。 そして、”nodes(特定のライフサイクル活動に使用された地域の集計)” 間の接続に関する情報を”corridors(動物がノード間を移動するパスの集約)” を通して伝える。テレメトリー、マーク/キャプチャ、安定同位体、遺伝子、及び音響サンプリングを含む幅広いソースからのデータは、協力パートナーや体系的な文献レビューから直接集められている。このレビューは、 移動性野生動物の保全に関する条約に記載され、地域漁業管理機関に管理されている200種類以上が含まれ、また完全なシステムは、4つの分類群に渡る1000種類近くの移動動物種に対応する。レヴューの50%以上の種が、IUCN(国際保護連合)に、準絶滅危惧、絶滅危惧Ⅱ類、絶滅危惧IB類、または絶滅危惧IA類として定められており、絶滅危惧IB類の20種類、絶滅危惧IA類13種類を含む。MiCOシステムが構築した知識体系には自由にアクセスできるようにし、国の管轄区域内外において、海洋移動種の保全管理に参加を希望する国家などに対して条件を平等にする。

昨年、デューク大学School of the Environmentの大学院生を募集してチームを拡大したデューク大学MiCOチームは、MiCO全パートナーを対象に戦略的キックオフミーティングを開催し、海洋動物移動種に関するすべての空間情報が保持されるMiCOウェブサイトの基盤やオンライン対話型ツールを構築した。今後6ヶ月に渡り、Marine Geospatial Ecology LabのMiCO研究者たちは、さまざまな国際会議でプレゼンテーションを行ったり、共同研究の可能性を探る話し合いをするために、海洋移動や移動生態学に焦点を当てた研究者のコミュニティに働きかける予定だ。 MiCOが、海洋移動性分類群、その接続性についての生態学の重要性における知識を集約することにより、研究者と政府は海洋移動性種の時空間的分布について利用可能な情報の中で分類学的および空間的偏り、ギャップを特定することができる。つまり、既存の知識のギャップを埋めるために、よりターゲットを絞った研究が可能となる。

MiCOワークショップで発表するGuillermo Ortuño Crespo(デューク大学/ネレウスプログラムフェロー)

私は、デューク大学の博士課程で、魚の分類群に注力している。すべての回遊性魚種の分布に関する時空間的知識を管理する責任を負っている。主に、数種のマグロ、メカジキ、大洋性サメなどを含む国際漁業における主な漁獲と混獲魚種に関心がある。文献レビューの段階では、71魚種に関する3000の論文について確認した。デューク大学Nicholas School of the Environmentの大学院生と共に1年半以上を費やして分類し、準備する予定だ。ネレウスのパートナーとして、Marine Geospatial Ecology Labは、公海における種の地域ベース管理というテーマで、他のネレウス機関との共同研究を推し進める。

国連総会決議69/292に従い、国連準備委員会は、2016、2017年に、国の管轄を超える地域の海洋生物多様性の保全および持続可能な利用について、国際的な法的拘束力を持つ文書の原案作成のために集まった。太平洋諸国から沿岸カリブ諸国まで、世界の国々は、国家間や公海における海洋移動性種の国境を越えた動きについての情報にアクセスすることに特に関心を示した。今後数年間、MiCOシステムは、移動性種に関するこの新たな空間知識を集約し、広めていく。これは、国連による公海の地域ベース管理の確立に特に有用となる可能性がある。これら多くの種の境界を超えた繋がりを理解、保全、管理することは、生態学的影響のみならず、世界の沿岸コミュニティにおける社会経済的および文化的な影響をもたらす。


GUILLERMO ORTUÑO CRESPO, MSC, ECOSYSTEM-BASED MANAGEMENT OF MARINE SYSTEMS
Duke

マグロの保護と管理および漁業管理への遺伝子ツールの利用の研究に焦点をあてている。ネレウスでの主要な研究目的は、空間生態学や移行性の高い保護、ストラドリング魚類( ある国の排他的経済水域とそれに接続する水域、例えば隣国の排他的経済水域又は公海。この双方にまたがって分布する魚類をいう)で、越境管理や特に国家管轄権を超えた海域管理についての基礎的な疑問提示を行う。

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