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ブルーカーボン排出量に対する解決策:バングラディッシュ沿岸におけるエビの養殖、マングローブ森林破壊、気候変動

バングラディッシュの養殖生産量は、中国、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピンに次ぎ6番目である。バングラディッシュは、有利な物理的特性を持ち、特にクルマエビ養殖に非常に適している。沿岸コミュニティーにおいて、エビ養殖によって生計の機会が多様化してきており、200万人以上の人々が、魚の養殖、魚市場、魚の加工、魚の輸出に関わっている。

バングラディッシュでのエビ分野は、数百万ドルの産業であり、国家経済の非常に重要な要素となっているエビ養殖は、国家経済を必然的に押し上げ、バングラディッシュでの沿岸コミュニティーに雇用機会を広げたが、マングローブの生態系に壊滅的な影響を与えている側面もある。

William Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学)が共著した新しい記事、“Solutions to blue carbon emissions: Shrimp cultivation, mangrove deforestation and climate change in coastal Bangladesh” がMarine Policyに掲載された。この記事は、バングラディッシュ沿岸でのエビの養殖によるマングローブ破壊、ブルーカーボン(沿岸および海洋生態系の炭素)排出量の減少という主要課題に重きを置き、マングローブ森林のエビ養殖場への転換、気候変動によるエビ養殖への影響、マングローブ漁業と沿岸コミュニティについて議論し、発展性のある適応戦略を提案する。

バングラディッシュでのエビの養殖は、沿岸コミュニティの社会経済文化を向上させたが、マングローブの生態系の健全性が犠牲となった。Image: “Woman showing shrimps caught from her pond in Khulna, Bangladesh” by M. Yousuf Tushar, CC BY-NC-ND 2.0.

前例のないエビ養殖の発展により、バングラディッシュのマングローブ森林が広範囲で破壊された。マングローブ森林は、熱帯地域で最も炭素が豊富な森林であり、マングローブへの壊滅的な影響によりブルーカーボン排出量が大幅に増すとなれば、人為的要因による気候変動に取り組むためにマングローブの破壊によるブルーカーボン排出量削減が重要である。マングローブの生息地の回復と相まって、マングローブでの養殖から開水域多栄養段階統合水産養殖(IMTA) へとエビの養殖を移転することで、ブルーカーボン排出量を大幅に削減することができる。さらに、気候変動による変化からのマングローブの回復力を構築しつつ、 森林減少・劣化に由来する排出の削減 (REDD +)がブルーカーボン排出量の削減にも役立つ可能性がある。しかし、これらの適応戦略を実施するには、新たな制度や政府による支援が不可欠だろう。

ブルーカーボン排出量削減のためのバングラディッシュのマングローブ森林の保護は、適応戦略の実施に依るだろう。Image: “Swamp Forest” by Rassel Chowdhury, CC BY-ND 2.0.

要約:
バングラディッシュでは、輸出のためのエビの養殖は、国家経済の最も重要な分野の一つある。しかし、バングラディッシュ沿岸でのエビの養殖は、マングローブの森林へ甚大な影響を与えている。マングローブは、熱帯地域で最も炭素が豊富な森林であり、エビの養殖によるマングローブ破壊によりブルーカーボン(沿岸や海洋生態系での炭素)が蓄積している。これらの人為的炭素排出は、気候変動の主因である。開水域多栄養段階統合水産養殖 (IMTA) 、マングローブの破壊、 森林減少・劣化に由来する排出の削減 (以下REDD +)を含む幾つかの適応戦略は、ブルーカーボン排出量削減に役立つ可能性がある。養殖をマングローブから開水IMTA へ移行し、生息環境を修復すれば、ブルーカーボン排出が削減されるだろう。REDD+プログラムによるマングローブ修復は、気候変動対策に必要なマングローブを保全する可能性を持っている。しかし、適応戦略を実施するためには制度の援助が必要とされる。

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