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ネレウスプログラム、沿岸域先住民の漁業資源に関するワークショップを共催

By Victoria Pinheiro, Nereus Program Strategic Communications Lead

魚と未来の分科会セッションで意見交換をする太田義孝(ネレウスプログラムディレクター・政策)とLarry Campbell(Swinomish族長老)

2018年4月3日、太平洋岸北西部の沿岸域先住民族コミュニティが抱える課題、彼らがはるか昔から頼ってきた魚の未来について討論するため、部族代表、学生、学者たちが集結した。気候変動、汚染、有毒な藻類の繁殖により、ワシントン州のアメリカ先住民族の部族とブリティッシュコロンビア州の先住民族が頼っているサケや貝類の生息が脅かされている。これらの漁業は、両先住民族の重要な栄養源であり、経済価値があるものである。また、文化的な重要度が高い。これら3つの側面すべてが、ワシントン大学の wǝɫǝbʔaltxʷ(Luhshootseed言語の“Intellectual House” )で開催されたFish and Futureと題したワークショップで議論された。この建物は、沿岸先住民であるセイリッシュの人々の伝統的なロングハウスに着想を得て建てられたものである。高いスギの壁と梁が特徴で、先住民の伝統的な図柄で覆われている。Muckleshoot族の文化ディレクター Willard Bill Jrと息子のJustice Billによる伝統的な歌やドラムでこの会議の幕が開いた。言葉、音楽、設定により、この会議が行われる場所、そして会議の意義に無類の感覚が創り出された。「我々はここにいる。生きている、そして強い。ここが我々の発祥の地であり、我々は他から移り住んで来たのではない。」Billは、太平洋岸北西部の先住民として私たちに語った。

Justice Billとその父 Muckleshoot族のカルチャーディレクターWillard Bill Jr.による演奏

沿岸域に住む先住民は3700万人。彼らが生活の糧とする漁業への環境的な脅威は、先進国の開発から生まれており、彼らの食糧主権が緊急な課題となっている。「ブリティッシュコロンビア州の41%の先住民たちが食糧不足を経験しており、調査した91%の人々が伝統的な食べ物を食べたいと思っているが、もう伝統的な食べ物を入手する権利がない。これが問題になるには、様々な理由がある。より伝統的な食べ物は、市場の食べ物より健康的であることが一つあげられる。」とLaurie Chan (オタワ大学教授)は説明し、さらに条件が悪化する可能性が高いことを示唆する。「気候変動の影響下で、ブリティッシュコロンビア州の沿岸沿いの魚資源は大幅に減少すると予測されている。これは、健康的な食事や必要栄養摂取量の減少を招く可能性があり、人々の文化的幸福にも悪影響を及ぼす。」言い換えれば、これは栄養の損失だけでなく、遺産の損失と言えるのだ。

Sara Jo Breslow博士の演劇「The Last Best Place」のインタラクティブリーディングに参加する出席者たち。見学するVictoria Pinheiro(ネレウス戦略コミュニケーションリード)とYoshi Ota(ネレウスディレクター・政策)

このワークショップの形式は、我々が何をすべきかを模索する際の創造的思考にひらめきを与え、生み出すために取り入れられた。学術的講演やプレゼンテーションとしては、Colby K. NealによるBroken Fish の映画のスクリーニングやDr. Sara Jo Breslowによる、サーモン、人々、生息についての演劇「The Last Best Place」でインタラクティブリーディングが行われた。Breslowの演劇は、太平洋北西部の人とサーモンの生態系の話を伝えるために、人類学的インタビュー中に記録された部族のメンバー、農業従事者、そして科学者の言葉を取り入れている。彼女は11人の参加者をテーブル近くに集め、脚本を配った。「彼らが本当にしたいのは、私たちの活動をコントロールすることなのか、それとも本当に魚を保全したいと思っているのか、と疑問に思う日々だ。あなたには理解できないかもしれないけれど、私たち家族は110年もの間ここで生活してきているのだ。本当に長い間。この土地は私の遺産であり、孫たちに相続するつもりだ。」と返還規則にいら立つ農民の言葉としてある参加者が読み、「誰かが、例えば、インディアン部族のメンバーにそれを言うことができるなんて。」と部族の人としての言葉を話し、他の参加者が答える。「知っているだろう、110年の年月は瞬きしている間に過ぎ去ったのではない。」参加者たちは、自分が演じる人格の視点を経験することができる。自身が先住民ではなくとも、感情と共感をもって別の人間の言葉を話すことができたのだ。

左:適応と行動計画のためのコースを描くために、分科会に参加するYoshi Ota(ネレウスディレクタ-・政策)右:魚と未来会議で、対話から着想を得たワシントン大学学生Emily Rhoadesによるスケッチ

この午前中の取り組みは、午後の生成的なプランニングセッションに影響を与えた。参加者たちは、継続的な取り組みを調整するための対策本部を設置し、先住民と西洋の科学を統合して戦略的適応と行動計画を策定することを提案した。「私たちが部族コミュニティに問い合わせると、研究目的とともに歴史、コミュニティ、文化を得る」とSwinomish部族の長老Larry Campbellは話した。この会議は、その日の対話に触発された新しい計画やイニシアティブについて進歩と高揚感を書き留めて終了した。「ここにいるすべての組織はおそらく初めての会議から発足しただろう。この会議が私たちにとって新たな始まりとなると確信している」とDr. Elaine Faustmanは語った。

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