海水に広範囲に根を広げ生育するマングローブは、人間および海洋生態系に多くの「サービス」を提供している。マングローブ林は、炭素を保存し、大気から炭素を引き出し、沿岸域の侵食を防ぐ。また、マングローブ林は、多くの重要な漁業に含まれる海洋種の重要な食糧源、隠れ場となっており、世界の熱帯地域と温帯地域の150,000km²の海岸線を覆っている。Rachel Seary(Cambridge/UNEP-WCMC/ネレウスフェロー)は、マングローブによる地域社会とその周辺の漁業への直接的利益、また沿岸漁業生産性への間接的利益の両方を理解するための調査を、インドネシア、バリにおいて現在実施している。
Rachelは、マングローブ、漁業、コミュニティの結びつきを考察するためのデータ収集を実施するべくフィールドワークを行なっている。複数の漁村に囲まれ、3067.71haのマングローブ林があるバリでは、マンブローブが漁業を通してどのようにコミュニティーに利益をもたらすかについての詳細な事例研究ができる。彼女は、多くの漁業活動拠点となっている西バリのペランカク河口沿いのマングローブを研究の対象としている。また、それぞれの地域社会が地域のマングローブ林が持つ多様な相互作用の概要的フレームワークを構築するために、南バリのデンパサール、バリバラット自然保護区、北西バリの大規模なマングローブ地域も訪れる予定にしている。
彼女は、現在データ収集のために2週間、養殖やエコツーリズム部門など、マングローブを利用しているコミュニティ活動と、職人漁、遊漁者、小規模漁、商業漁者とのインタビューを通し、漁業コミュニティとマングローブ林との相互作用の複雑さ、および漁業コミュニティ内部についての情報を収集している。彼女は、残りのフィールドワークでどんな所見にいたるか楽しみにしている。