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気候変動ー海洋食物連鎖における汚染物質の相互作用

気候変動が海洋に及ぼす影響のリストを考えたとき、海面上昇、海水温上昇、海洋酸性化がまず最初に挙げられる。William Cheung (ネレウスプログラムディレクター・科学)と Rashid SumailaOceanCanadaディレクター/ネレウスリサーチアソシエイト(名誉学位))は、海の中で重要ではあるが、ある意味意外な気候変動関連のストレス、海洋汚染物質を探求したレビュー論文を共著し、Global Change Biology に掲載された。

この論文は、気候変動が、直接的に汚染物質を増加させる(例えば、氷冠が後退することによる)事によって海洋食物網における影響に変化がでる事と、生物を他の気候変動の影響に対してより脆弱にするという2点を明示している。この論文では、海洋生物の健康に影響を与える可能性のある汚染物質の主な二種類、持続性有機汚染物質として知られる脂溶性汚染物質 (POPs)、メチル水銀(MeHg)のようなタンパク質結合汚染物質について議論されている。これらの汚染物質は1970年代にある程度除去されたが、残存物として海洋食物網を通して循環され続けており、著者たちによれば、海洋生物多様性に最も大きな影響を与えている。

著者たちは、北東太平洋に生息するシャチの食物網に気候変動や汚染の相互作用効果を模索する事例研究を発表した。 Image: “Orca Pod Southern Residents” by NOAA.

著者たちは、まず気候変動と汚染物質の相互作用影響についての既存の文献を見直し、その後シャチの食物網における気候と汚染物質の影響の可能性を予測した、北東太平洋の事例研究を提示した。例えば、海水温上昇によりキングサーモン(シャチのprimary food)の脂肪含量と大きさが減少し、またその組織内にポリ塩化ビフェニル (以下PCBs)や一般的な残留性有機汚染物質が増加するかもしれないという結果を示している。結論として、シャチは、より低い魚脂肪含有量を補うためにサーモンをもっと食する必要があるかもしれないし、「通常通り」または気候変動がないシナリオよりも、自分の組織内にPCBをより多く蓄積させることになる。その上、PCBsやメチル水銀は海洋生物の免疫システムを抑える、そうすると気候や海水温の変化によりシャチの生息地にもたらされる可能性のある新しい病気や病原体に対しより脆弱になる。

論文は、資源量や食品安全の面での漁業への影響で締めくくり、海洋生態系に影響を及ぼす汚染や調査中の気候変動の影響をさらに調査する際に使用すべきフレームワークとしての方法を提示している。

要約:
気候変動は、海洋の化学的性質を変えたり、海洋生物相の生理機能、健康、 食生活に影響したりすることで、汚染が大部分で世界環境の中を移動する道を再構築している。気候変動に伴う海洋食物網の構造と機能への影響は、結果として汚染物質の輸送、動向、影響が変化し、 食料、娯楽、文化として魚資源に依る所が大きい人間に重要な影響を持つ可能性が高い。食物網の生物濃縮に焦点を当てた気候変動と汚染物質の相互連鎖に関して発表された研究は、気候変動と海洋酸性化が海洋食物網での汚染レベルにどのように影響するかを調査するために体系的に再検討した。私たちは、海洋食物網での汚染物質の蓄積への気候変動の影響と生態学的財とサービスとしての結果も同様に説明するための概念的枠組みをここでは提案する。食料として漁業に頼っている沿岸コミュニティーにとっての社会的および経済的安全への潜在的な影響について議論する。気候変動と汚染物質の相互作用は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ならびにタンパク質結合メチル水銀(MeHg)などの脂溶性持続性有機汚染物質(POPs)といった、2つの優先汚染物質クラスの生物蓄積を変えるかもしれない。これらの相互作用は、気候変動優勢(気候変動が汚染物質の出現を増加させている)か汚染物質優勢(汚染物質が気候変動の増加につながる)があるかと思われる現象を含む。私たちは、北東太平洋での事例研究を使用して気候変動と汚染物質の相互作用の経路を説明する。気候変動下での化学汚染物質汚染の生態学的および人的健康リスクの管理における意思決定に情報を提供するための生態学的食物網モデリングの重要な役割も強調している。最後に、私たちは、温室効果ガスおよび海洋汚染物質の生態学的および社会経済的リスクを管理する統合された政策を策定する必要性を認識していることも示している。

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