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論文ハイライト

動的環境での海洋生物資源の管理:季節ごとの予測、今後10年の予測の役割

気候の変動は、魚資源の変動につながる:気候変動は魚の行動分布および成長率に影響を与える可能性がある。このため、漁業管理はこれらの変動に動的に対応しなければならない。管理決定が主に過去のパターンを基に行われた場合、気候変動によって状況が悪化する可能性がある。Charles Stock (NOAA/ネレウスプログラム研究責任者)、Rebecca Asch (イーストカロライナ大学/ネレウス同窓生)、Malin Pinsky (ルトガー大学/研究責任者)、Ryan Rykaczewski (サウスカロライナ大学/同窓生)が共著したOceanography の新しい論文では、海洋生物資源とその展望や課題について、季節ごとの予測、また今後10年の予測に関して考察している。

植物プランクトンから巨大マグロまで:気候変動が海の生態系のエネルギーの流れに及ぼす影響

植物プランクトンは、ほとんど全ての海洋生物にエネルギーを供給する根幹を為す。植物プランクトンの量により、その海域で捕獲できる魚の生息量を予測できそうに思うかもしれない。しかし、ネレウスプログラムの研究者による新しい研究では、この関係はそれほど単純ではないことを示している。

気候とカタクチイワシとイワシ

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、カタクチイワシとイワシは2012年の世界漁獲量の13%を占めた。人間、海洋哺乳類、海鳥、イカ、および他の魚が、これらの小魚を消費する。また、水産養殖飼料、工業用油、および健康補助食品にも使用されている。Annual Review of Marine Scienceに掲載された Rebecca Asch (プリンストン大学/ネレウス同窓生)とRyan Rykaczewski(サウスカロライナ大学/ネレウス同窓生)が共著した新しい研究 “Climate, Anchovy, and Sardine” は、カタクチイワシとイワシの過去、現在、未来についての論文である。

パリ協定で掲げた気温上昇1.5度目標を達成すれば、年間600万トンの漁獲が可能となる

パリ協定で掲げた世界の気温上昇を1.5度以内に抑える目標を達成すれば、漁業に大きな利益がもたらされるだろう、という日本財団ネレウスプログラムの研究論文が学術誌Scienceに掲載された。地球温暖化が摂氏1度抑えられるにつれ、潜在漁獲量は年間300万トン以上増える可能性がある。

環境および社会経済的変化に伴うカナダの海や海洋漁業の将来を調査するためのシナリオ

Louise Teh(ブリティッシュコロンビア大学 Fisheries Economics Research Unit/リサーチアソシエイト)、William Cheung(ネレウスディレクター・科学)、Rashid Sumaila(OceanCanadaディレクター/ネレウスリサーチアソシエイト(名誉学位))が執筆した論文 “Scenarios for investigating the future of Canada’s oceans and marine fisheries under environmental and socioeconomic change“が、Regional Environmental Changeに掲載され、カナダでの海洋保全や漁業セクターでの既存のシナリオ分析方法(複数の潜在的な結果に基づいて将来の対応を準備する方法)を見直した。

地中海の生物地球化学の領域:客観的多次元および多変量環境アプローチ

Gabriel Reygondeau (ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスフェロー)が筆頭著者として執筆した研究、“Biogeochemical regions of the Mediterranean Sea: an objective multidimensional and multivariate environmental approach” がOceanography に発表された。この論文では、地中海の生態系に生物地球化学/生体空間的枠組みをあてはめた。筆者らは、これまでの研究のほとんどが、海表面は異なる環境変数に作用されると仮定し、海表面の生態系を海底の生態系まで拡大することはできないと示唆している。そのため、この分析では垂直次元が重要であり、また小規模で深度によるゾーン分けの中での違いを考慮した保全管理の必要性を強調している。

世界の先住民漁業の重要性:先住民一人当たりの水産消費量は居住国の平均水産消費量の15倍に達する

沿岸に住む先住民の一人当たりの水産消費量が、居住国全体の平均水産消費量の15倍に達するという研究結果が、PLOS ONEに発表された(太田義孝、アンドレス・シスネロス)。これは世界で初めて、先住民漁業をグローバルな規模で定量的に分析した論文であり、日本財団ネレウスプログラムがオリジナルに作成したデータベースをその基盤としている。また、本研究は、漁業政策と社会的人権を一環として捉え、食糧(料)主権と文化アイデンティティが国際海洋政策において重視されるべきであることを提起している。

海洋漁業の世界地図

Sea Around Usは、過去10年間で、特に漁獲30%が無報告であることを突き止め、世界の漁獲に関するより正確な見解を構築してきた。Daniel Pauly とDirk Zeller率いる、273カ国からの400人の研究者たちによる研究成果が、Global Atlas of Marine Fisheriesと題した520ページの本に編集された。

種の密度に基づく海洋富栄養化損傷指標の空間微分

Miranda Jones (ネレウス同窓生/UNEP-WCMC) と William Cheung(ネレウスディレクター・科学)が 共著した論文、“Spatial differentiation of marine eutrophication damage indicators based on species density” がEcological Indicatorsに発表された。この論文は、海洋生態系に影響する富栄養化を査定するための指標の開発と沿岸水域への窒素負荷量に対する生態系の応答標識の導入を調査した。

保全の事例研究:エストニアの自然保護

Richard Caddell(ユトレヒト大学/ネレウスフェロー)が先日発表した “Wilderness protection in Estonia“では、ヨーロッパ原生自然管理のケーススタディとして、エストニアの事例を用いた。 Caddellは、「エストニアで素晴らしい自然保護がなされていることは、あまり知られていない。エストニアでは、13世紀から人がほとんど立ち入らない自然保護区を設けており、EUの中でもこの分野に関して厳しい法規制を敷いている国である。エストニアの島々や沿岸の大部分の保全状態が良く、比較的手つかずの状態であり、さらに責任を持って運営されるエコツーリズム産業がある。