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10年後の世界:植物プランクトンは予想以上に速く移動するのか

James Watson(ストックホルムレジリアンスセンター研究員/ネレウス同窓生)による新しい研究が Nature Communications に掲載され、海洋浮遊物種は、海面上の一つのエリアから全世界に渡る他の場所に10年未満のうちに漂流するということを予測した。

「海中のある地点から他の地点に移動するのに最速平均で10年くらいだと考えられる。海洋学者であれば、水が世界中の海を移動するのに1000年以上かかると教えられたことだろう。ゆえに、この10年という期間は驚くほど短かった。」とWatsonは話す。

研究者たちは、とりわけ極微小な植物プランクトンを考察するためにコンピューターモデルを使った。それは表層水に住む微生物で、光合成によってエネルギーを得ている。他の海洋種とは違い、植物プランクトンは泳いだり、自力で進むことはなく、完全に海流によって移動する。

私たちは、物体が海面のある地点から他の地点にどれだけ速く動くのかを測定した。海の特定の場所でこの観測を行ったのだが、方法としてはテニスボールを落とし、海流によってどこへ移動したかを追跡した。さて、この観測では、数個のテニスボールを幾つかの場所に落としたわけではなく、500億のテニスボールを落としたのだ。もちろん実際に海で行うと環境災害になるため、コンピューターを使用し模擬実験を行った。

A model showing the dispersal of particles over a three year period from low (blue) to high (red) concentration. Credit: Bror Jönsson, Princeton university

モデルは、低濃度(青)から高濃度(赤)へ、3年にわたる分散粒子を示している。 Credit: Bror Jönsson, Princeton University.

海を移動する500億のテニスボールは実際にはないが、人工物の漂流で似たような偶発的実験が行われてきた。それによると、1990年には80万足のナイキシューズが、そして1992年には2万9千個の子供のお風呂のおもちゃが嵐により海へ流出した。この流出実験は海流経路の地図作成に役に立っている。またその著者たちは、海を漂流するこれらの物が実際にかかった時間と同じ時間スケールを算出していた。

海面は世界中で繋がっているので、汚染は以前考えていたよりも速く移動することを意味する。Watsonは、微小なプラスティック粒子、マイクロプラスティックが海流によって海の特定部分に集積し、牡蠣やザトウクジラなど幅広い海洋種がそれを摂取していると特筆している。さらには、どのように植物プランクトンが気候変動に適応していくかも示している。

「我々の研究では、海の大部分において温耐性種が混じることで気候変動に適応するだろうと示している。それは、進化によるものでなく、植物プランクトンが適応することによる優勢メカニズムだと考えている。紅海やアラビア海のような非常に暖かくなっている場所には、温耐性プランクトンが存在する。しかし、今後10年で温暖化が進むので、これらの暖かい場所から他の場所への短時間移動が進み、これらの有機体が他の海域を支配し始めるように見えるだろう。その一方で、これらの温暖域は気候変動に追いつけなくなっていき、そのため温耐性種を受け入れらえる「温暖な」場所がなくなる。結果として、気候変動に影響を受けた「温暖であった海域」がまさに、植物プランクトンが気候変動に適応し、進化が主なメカニズムとなる海域となるのだ。」とWatsonは話す。

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