Richard Caddell(ユトレヒト大学/ネレウスフェロー)が先日発表した “Wilderness protection in Estonia“では、ヨーロッパ原生自然管理のケーススタディとして、エストニアの事例を用いた。 Caddellは、「エストニアで素晴らしい自然保護がなされていることは、あまり知られていない。エストニアでは、13世紀から人がほとんど立ち入らない自然保護区を設けており、EUの中でもこの分野に関して厳しい法規制を敷いている国である。エストニアの島々や沿岸の大部分の保全状態が良く、比較的手つかずの状態であり、さらに責任を持って運営されるエコツーリズム産業がある。
Caddell は、エストニアでこの保全レベルを作り出した歴史や地理的特徴、保護区の立法や管理、原生自然保護や管理において直面している将来の課題について概説している。
この章は、Wilderness Protection in Europe: The Role of International, European and National Lawの中で発表されている。
本の概要:
ヨーロッパには、多くの自然や生来通り機能する生態系の宿主となっている場所、つまり、道路、建物、橋、ケーブルなどの現代社会に見られる恒久的設備がない広い領域が依然として多く存在する。以前は、そのような地域は荒地として考えられ、栽培や経済的搾取のための潜在性のみに価値が置かれていた。しかし今日では、これらの原生地域は、休息やレクリエーションのための場所として、または科学的研究、生物多様性保全や特定の気候変動の影響を緩和し適応する、重要な地域として大切にされている。この本では、ヨーロッパに残された自然保護地域とその特徴的な資質を保護する上で、国際法、ヨーロッパ内、国内の法の役割についての主要な評価を初めて示している。また、国際、地域および国の様々なアプローチから学びとれる知恵を提示し、ヨーロッパでの原生自然保護への障害を特定し、自然の法的保護をさらに進展させることができるか、またいかに実践できるかを考察している。