気候変動及び人間活動は、海洋生態系自体の完全性と人間社会にもたらすサービスを脅かしながら、海の状態に大きな影響を与えている。現在と未来の気候変動の影響を考えると、物理システムと人間システムの両方で適応することが不可欠である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の定義によると、適応とは「実際または予期される気候とその影響に調整過程のこと」である。
新しい記事 “Adaptation strategies to climate change in marine systems(海洋システムにおける気候変動への適応戦略)“では、Dana Mille(ネレウス共同研究者/Fisheries Economics Research Unit)、Yoshitaka Ota (ネレウスディレクター・政策/ワシントン大学)、Rashid Sumaila(リサーチアソシエイト)、 Andrés Cisneros-Montemayo(リサーチアソシエイト/ネレウスプログラムマネージャー/UBC)、William Cheung (ネレウスディレクター・科学/UBC)が海洋適応戦略の推進要因、タイムライン、コスト、限界を探った。
このレビューでは、特定の海洋適応状況から推進要因のタイプや対応戦略を強調している。さらに、海洋適応研究におけるずれや障壁を特定し、さらなる研究が必要である特定分野を提案する。
分布を移動したり生物学的事象を適時選択することで、海洋種が気候変動に適応していることがわかった。しかし、自然システム適応は、人間システム適応より文献の中ではるかに多く取り上げられている。
人間システムでは、文献レビューから提案された枠組みと原則を通じ、適応計画への焦点を明らかにする。しかし、実施された適応政策や成果についてあまりデータがないのが現状だ。多くの人間システム適応策は、計画過程で行き詰まっており、資源、制度、および容量の限界のために履行のための明確なビジョンが欠けている。政策、制度、法的枠組み、または経済的インセンティブの変更のような、人間システムの適応に関してはあまり前進が見られない。
概要:
世界の海は、海が支える海洋生態系や生活に多大な影響を及ぼし、気候変動や他の人間活動からの圧迫により大きく影響を受けている。自然システムと人間システムの適応が、継続中の変化や今後起こりうる変化の進度や規模に対処する方法としてますます重要となる。ここでは、私たちは海洋システムにおける適応に関する特定のケーススタディに関連する文献のレビューを行い、推進要因、戦略、タイムライン、コスト、限界を含む、関連する特性と影響要因について議論する。進化過程による適応の証拠が限られているので、海洋生物が分布の移動と生物学的事象の適時選択を通して、気候変動に適応しているということを示す文献に十分な証拠を見つけた。人間システムに関しては、既存する研究は適応計画の枠組みや原則に焦点を置いているため、実施された適応行動の例と成果の評価は不十分である。これらの調査結果は、今後の有益な戦略を明らかにしている。