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新規漁業の規制について:新たな魚資源に対する規制

By Richard Caddell, Nereus Program Fellow at Utrecht University

水産物の世界的需要に対応するために、現在の漁業を大きく変える必要があることが顕著となっている。気候変動やそれに関する変化が、漁業資源の分布に重大な影響を及ぼすと予測されていながら、多くの漁師たちが、すでに生態学的能力および経済的能力以上の漁を営んでいる。多くの魚種が冷水域や深海へと移動している。これは、漁業が撤退したり、新たな装置や技術が必要となる可能性があることを意味する。規制面からみると、これらの傾向において、漁業資源の変化による勝ち負けの状態が起こるので、ガバナンスが重要な意味を持つことになるだろう。

漁業ガバナンスで見落とされてきた問題は、意外にも新しい漁業の規制である。現在の漁業管理のフレームワークは、魚資源が本質的に変化がなく、少なくとも予測可能な局所的な動きを前提としており、もし漁業者が国際義務を遵守すれば、持続可能な範囲での最大量で魚を無限に供給することができる。新しい漁業の開発によって提起された法的見解は、ほとんど研究されておらず、日本財団ネレウスプログラムの元ユトレヒト大学Netherlands Institute for the Law of the Seaにて行われる新い研究プロジェクトの一環として考察している。

1989年、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会が南極海での新しい漁業を規制し始めた。 Image: “Antarctica. 1995.” by Dr. Wayne Trivelpiece. Credit: NOAA NMFS SWFSC Antarctic Marine Living Resources (AMLR) Program.

新しい漁業は、法的にも生物学的にも複雑である。大抵、全ての新しい漁業が、対象資源、またはそれを取り囲む生態系に関する事前情報がほとんどまたは全くない状態で開始されており、重要な規制が適用される前に、海洋環境や脆弱な魚資源に甚大な被害を与える結果となる。それゆえ、この終末期のシナリオを避けるため、新しい漁業への予防的アプローチを確実に適用する必要がある。しかし、反対に、現在の漁業が人間のニーズを満たすのに不十分な場合、ますます必要となる新しい漁業機会の追求によるリスクは避けられない。したがって、新しい漁業の規制は、漁業を承認する決定が、十分なデータ、動的な海洋環境における課題を考慮して行われることを保証しつつ、制限された漁獲を許可するという危ない橋を渡らなければならない。

私の研究プログラムでは、新規及び探索的漁業の規制が、地域化された基準とグローバル化された基準の両方で、どのように作られたかを考察する。これは、1989年に南大洋で初めて調べられた。南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(以下CCAMLR) が、新しい漁業を試験的に規制するために始まった。新規及び探索的漁業の状況がCCAMLR内で具体化し始めたので、それに加え、最終的に1995年の国連魚資源協定を開発するための国際交渉が進められていた。その結果として、1995年の協定は第6条(6)で、新規及び探索的漁業に適用すべきである保全および管理措置を確実にする義務を定めている。それ以来、適切であれば、完全な商業管理を目的として、徐々に新規の漁業が開発される可能性がある。これらの義務は、その後の多くの地域漁業管理機関 (以下RFMOs)の条約に盛り込まれ、生態学的に繊細な海においては、新しい漁業を考察している状況である。

南極の重要な漁場はロス海で、そこでは 植物プランクトンがオキアミ、魚、ペンギン、クジラを呼び込む。 Image: “Bloom in the Ross Sea” Credit: NASA Earth Observatory, CC BY 2.0.

しかし、これまではこの点でのRFMOsの実践は、あまり調査されてきていない、したがって、このプロジェクトは、そのような漁業が操業されるべき原則を分析することで新境地を開く。それゆえ、この研究プロジェクトは、特にCCAMLRの実践を検討し、25年以上に渡りこの問題に取り組んでおり、新しい漁業の効果的なガバナンスのモデルを提供してきた。 CCAMLRの下では、新しい漁業は、そのメンバーの事前承認を得て設立することができ、漁業者が継続的な漁業の生態学的事実を適切に考慮するために、科学委員会にデータを返すという条件で実施された探索的漁業である。同様の要件は、多くのRFMOsで紹介されており、小規模での探索的漁業活動を開始している。その上、探索的漁業は、海底の生態系でのボトムフィッシングの特定の条件でも規制されている。

CCAMLRは、参加頻度は様々ではあるが、現在幾つかの異なる探索的漁業を操業している。あるものは広範囲に使用され、相当量のデータを返す一方で、他のものはかなり範囲が制限されていることがわかっている。資源と生態系についての比較的少ないデータを返すにも関わらず、多くの探索的漁業が継続して操業することが懸念されている。逆に、探索活動は、それ以外の場合には存在しないデータを返す一方、合法的な漁船の存在は、ある地域では違法漁師を抑止する可能性がある。一番重要な漁場はロス海で、これは必要なデータ収集要件を満たしており、原則として管理漁業に移行することができると考えられる。これは、体制が管理上の十分な適応性を実証しておらず、かなりの知識ギャップを統括することを懸念している専門家の間で、議論の余地がある。これまでは、漁業管理者は、移行プロセスを開始するのを躊躇しており、ロス海漁業は、本質的に依然探索的である。

この体制には、規制上の難しい問題が待ち受けている。個々のRFMOs は、新しい漁業機会の秩序ある発展を促すために予防的管理措置を構築することができたが、完全管理への移行を安心して許可するために必要なデータの量を予測することは困難である。実際に、研究漁業に固有の課題を考えると、完全な図式が成り立つことはまずない。移行過程において、漁業よりも強い管理が課されることを提案している。この点で、CCAMLR によって開発された探索的漁業に関する規制モデルは、ある程度の確実性と水産物の栄養の新しい供給源を見出だす緊急性との間での妥協を表す。このシステムは、欠陥を指摘する人がいたにも関わらず、初期管理における最も期待できる現在のモデルを表しており、他の多くの動的海洋環境でも用いられるかもしれない。


RICHARD CADDELL, PHD, INTERNATIONAL LAW
Utrecht

ユトレヒト
Richard Caddellは、越境漁業への法の関わりを研究。海洋法、国際環境法が専門てあり、゙特に野生生物管理、海洋多様性保全、北極海域保全を主な 研究テーマとする。鯨や海洋哺乳動物の保護、漁業、北極海の 管理および人権問題に強い関心を持つ。
国際的、またはEUの環境法、環境条約の調整、および北極地方の管理に関する多くの政府間組織、各国政府、非政府組織に助言している。

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