気候の変動は、魚資源の変動につながる:気候変動は魚の行動分布および成長率に影響を与える可能性がある。このため、漁業管理はこれらの変動に動的に対応しなければならない。管理決定が主に過去のパターンを基に行われた場合、気候変動によって状況が悪化する可能性がある。Charles Stock (NOAA/ネレウスプログラム研究責任者)、Rebecca Asch (イーストカロライナ大学/ネレウス同窓生)、Malin Pinsky (ルトガー大学/研究責任者)、Ryan Rykaczewski (サウスカロライナ大学/同窓生)が共著したOceanography の新しい論文では、海洋生物資源とその展望や課題について、季節ごとの予測、また今後10年の予測に関して考察している。
この論文は、2015年6月3日から5日にプリンストン大学で開催されたワークショップ“Applications of Seasonal to Decadal Climate Predictions for Marine Resource Management(海洋資源管理のための季節ごとの、また今後10年の気候予測の応用)”の結果によるものだ。この論文では、筆者らは異なる気候予測システムについて、その強みや限界を説明し、漁業管理において行われた気候変動に左右される決定と、海洋資源管理における気候予測の利用拡大の可能性をまとめている。
要約:
地球規模の動的気候予測システムの発展により、海洋生物資源(LMR) の理解や管理に役立つレベルでの海洋生物資源に影響のある気候変動予測が可能になっている。このような予測は、漁業科学における新しい研究手段と同様に、改善された海洋生物資源管理や産業運営の機会をもたらす。海洋生物資源は、生理機能や習性の変化を介して気候変動に反応する。気候と漁業の関係が確立されている種やシステムについては、予測される海洋生物資源の反応に、より予測的で、より効果的な決定をもたらし、管理者と利害関係者の両方に利益をもたらす。ここでは、気候予測システムの概要と、環境変数に関連する海洋資源の季節ごとの、また今後10年の予測の進歩について考察する。私たちは、気候予測を利用して海洋資源決定を通知する先駆的なケーススタディーを紹介する前に、数ヶ月から数十年のリードタイムで実施できる、気候に敏感な海洋生物資源決定の範囲について説明する。これらのケーススタディーの成功は、応用が可能であることを示唆しているが、観測やモデリングの課題によりその進歩は限られている。優先的な開発として、気候と海洋資源反応とのメカニズム的海洋生物資源モデルの連携強化、反応を明示する海洋資源モデルの開発、海洋資源が存在するいろんな原因が交錯する背景での気候駆動海洋資源ダイナミクスの統一、大部分の海洋資源決定がなされた細かい地域規模での生態系関連変数の予測改善が挙げられる。予測可能性には限界があるが、この分野での継続的な発展により、海洋資源管理者と業界の意思決定の際に、気候変動に関してより弾力性を持たせ、貴重な資源を維持するのに貢献できるかもしれない。この可能性を実現するためには、科学者、海洋資源管理者、産業の間での協力的な意見交換が不可欠である。