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ビッグデータと漁業管理:人工衛星を利用した漁業活動の追跡

「気候変動によって、海で最も影響を受けるのは、漁業だろう。しかし、地平線の彼方で何が起こっているのかを把握するには限界がある。見えないのだから。しかし、Global Fishing Watchの導入により、どこでどのくらいの漁業が行われているのかを把握することが可能となる。これは、いかに我々の海を管理していくのかという疑問に多くの解決策をもたらすだろう。」と、David Kroodsma(SkyTruth、Global Fishing Watchリサーチプログラムマネージャー)は話す。

私たちはGlobal Fishing Watchで地平線の彼方を見ることができるようになった。これは、SkyTruth、Google、Oceanaが9月中旬に共同で立ち上げたものであり、世界中の漁船を追跡するために人工衛星のデータを利用できる公的なプラットフォームである。Kroodsmaは、10月27日にUniversity of British Columbia’s Green Collegeで開催されたネレウスプログラムセミナーでこのプロジェクトについて話をした。

Global Fishing Watch は、元は海での衝突を避けるために開発されたシステム、自動船舶識別装置 (以下AIS) データを使用している。船舶が、どのような船か、何をしているのかという情報を発信するためにAISを使用する。このメッセージには、船舶名、船舶の識別符号、位置、速度や航路に関する情報を含んでいる。

「自分の船が、衝突を避けられるように、10マイル先のタンカーがどこに進んでいるのかを確認できる。これらの信号はどこにでも送られ、その信号を衛星が受け取る。自分の船がどの港に行こうとしていて、漁船、タンカー、客船、帆船など、どのタイプの船舶なのかも発信できる。」と、 Kroodsmaは語る。

Global Fishing Watch July to October 2016

2016年7月〜10月までの3ヶ月間の世界の漁業活動 Screenshot from: Global Fishing Watch.

Global Fishing Watchは、基本的に海洋のGoogleマップのようなものだ。タイムスケールは、2012年まで遡ることができ、日ごとから年ごとの時間区分で示される。漁業活動は、黄色の点で現される。点の集合にマウスを移動すると繋がった線が現れる。これは漁船の追跡である。この追跡をクリックすると、漁船名、識別符号や旗など漁船の情報が表示される。この地図は、海洋保護区と排他的経済水域も示され、国によってフィルターにかけることができる。例えば、静岡県から出航した船舶、海王丸81号が太平洋を渡って南アメリカで漁獲し、ペルー、リマに数回寄港するのを確認することが可能である。

Kroodsmaは、AIS 情報は利用者が独自に入力するため、間違えや欠測データがある可能性を特筆している。AIS システムを削除することも可能であるが、Global Fishing Watch は、不審な行為にハイライトをつけることができる。AISを削除することで、不審船舶が保障され続けるべきかの疑問にも繋げられる。

当初は、Global Fishing Watchのデータは、世界の漁業努力の大きさを測るのに使用されてきた。

「漁業活動についてを語るために、船舶移動の仕方に関する巨大なデータベースをいかに利用するかという疑問に答えるため、ネレウスの研究者たちのような人々と活動している。船舶の移動パターンや規模が分かれば、その船舶を操作するのにどれほど費用がかかり、航海にいくらかかるのかといった有意義な話し合いが持てる。つまり操作コストを考察し、実行可能にするためにどれだけの魚を漁獲しなければいけないかを把握することができるわけだ。」

Global Fishing Watch tracking Kaio Maru No. 81

Global Fishing Watch は、日本漁船、海王丸81号のように国を特定して漁船を追跡できる。 Screenshot from: Global Fishing Watch.

違法・無報告・無規制漁業(以下IUU漁業)もこのツールで判別可能だろう。ネレウスとの共同研究機関Sea Around Usによると、世界の30%の漁獲量が未報告であるため、これは不可欠な情報である。漁獲に関する正確な情報なしには、海洋や漁業の状態を理解することは困難である。

「Global Fishing Watchは、海洋の無規制の場所か、記録されている場所かを識別するのに役立つだろう。そして、どれだけの船舶がいるかを把握することで乱獲されている場所を知ることができる。また、IUU漁業を見つける手がかりとなる出荷先を特定することにも取り組んでいる。大型漁獲物運搬船が出航し、各漁船がその運搬船に漁獲物を下ろし、その後帰港する。つまり魚がどこで捕られたかがはっきりしないので、漁船が規制をすり抜けるためにこういった方法がとられる。運搬船を追跡するためにAIS データを使用すれば、他のどの船舶と接点を持つのかが見える。」とKroodsmaは話す。

AISデータを提供する幾つかの営利企業がある。SkyTruthは、そのデータを購入しプロセスする。できるだけ多くのデータが無料で利用可能となることを目標としている。情報を一致させ、より完全なデータベースにするために、個々の国々や地域漁業管理機関 (RFMOs)のような異なる情報源から漁船のリストを収集、整理、公開している。

「Global Fishing Watchは、ビッグデータ・コンピューティング・インフラの到来により、数年前にはできなかった巨大なデータをプロセスすることができたり、衛星技術が進歩してきたりと、非常に多くの異なる要因が重なったために非常に興味深い状況となっている。これらの新しい衛星は安くなっており、数多く存在する。最後に、Global Fishing Watchのような組織があることにより、巨大な量の情報をプロセスすることができ、それを利用できるようになった。これは、ここ2、3年でここまでの規模で利用可能となった重要なものと言えよう。」

Learn more UBC’s Green College on October 27.

David Kroodsma SkyTruth
David Kroodsma:世界の環境問題における研究とコミュニケーションに関して10年以上の経験を持つ。スタンフォード大学で物理学(学士)、地球システム科学(修士)の教育を受け、研究者、コンサルタント、データジャーナリストとして、地球規模の環境問題に取り組むことを目的とする非営利団体や財団法人に勤務してきた。長距離のサイクリストであり、気候変動プロジェクトとして、気候変動への人々の関心を集めるために、大陸横断自転車の旅を敢行した。それを元に、2014年Shelf Unbound Notable Book に選ばれたThe Bicycle Diariesを執筆、この著書はMontaigne Medal とForward Review’s IndieFab Book of the Yearの最終選考まで残った。カリフォルニア、オークランド在住。

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