ウィルフ・スワーツ博士の論文が、Fish and Fisheriesに掲載された。スワーツ博士は、共著 “Masked, diluted, and drowned out: how global seafood trade weakens signals from marine ecosystems,” の中で、個人漁業、世界貿易、遠隔消費者間に見落とされがちな結びつきに関して考察した。彼らは、魚の値段のもつ機能について研究し、魚が減っても魚の値段は変わらないため、消費者は魚の値段によってその資源量が多いか少ないかを見極めることはできないという結論を導きだした。
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Wilf Swartzが Ocean Wise 10周年記念シンポジウム で講演
ウィルフ・スワーツ博士は、 4月28日にバンクーバー水族館が主催したOcean Wise 10th Anniversaryに講演者として参 加した。このシンポジウムには、海洋と漁業科学における新しい研究について討論する ため、持続可能な水産物を扱う幅広い分野のトップリーダーたちが招かれた。科学者か らシェフ、そして水産・飲食業関係者まで、新しいアイデアや展望を共有しあった。彼 は、消費者がどの水産物を購入するかという選択がどれだけ持続可能な漁業の実現に強 い影響を持つのかをサプライチェーンマネージメントの観点から説明した。
SDG14とその他目標との相互作用:利益とトレードオフ
国連の持続可能な開発目標は、より良い世界を実現するために設定された素晴らしい目標である。しかし、目標間でお互いにどのように影響し合うのだろうか。ある目標が、すべての成功のためにより重要な役割を担うのか?その可能性はある。 新しい論文で、ネレウス研究員Gerald Singh,、Andrés Cisneros-Montemayor、Wilf Swartz、William Cheung、 J. Adam Guy、 Tiff-Annie Kenny、 Chris McOwen、 Rebecca Asch、 Jan Laurens Geffert、Colette Wabnitz、Rashid Sumaila、 Quentin Hanich、Yoshi Otaは、様々な持続可能な開発目標間の関係を評価するためにフレームワークを構築した。このネレウス研究チームは、SDGsの38%が、その目標の成果を上げるには、海洋の持続可能性に取り組むSDG14の目標達成に左右されることが分かった。さらに、SDG14は、他の全ての持続可能な開発目標に関連している。
しかし、すべてのSDGsは平和的に共存できるわけではない。この研究で、トレードオフもいくつか特定された。「SDGsの考えの中で、これらがすべて捕捉的でネスト化されているという前提があるが、そうではない。それらすべてが必ずしも共に働くわけではない。Singhの新しいフレームワークは、海のSDGとその他目標間の潜在的な緊張点をいくつか特定した。例えば、海洋保護区域を作ると、沿岸域に住む人々が地元の海洋資源にアクセスするのを妨げる可能性がある。これは、飢餓に終止符を打ち、貧困に直面する人々に関係する格差の縮小を目指すSDGの進展を制限するかもしれない。同様に、過剰漁獲や有害な漁業補助金の排除すると、十分な職業機会と経済成長に悪影響を与える可能性がある。しかし、これらのトレードオフは変更不能なわけではない。
過剰漁獲を減らした場合、短期的には一部の人々が職を失くす可能性がある規制を作ることとなるだろう。しかし、長期的には、切り替わる可能性がある。過剰漁獲を減少させる計画に、代わりの雇用機会を盛り込めば、このトレードオフの影響を小さくする可能性がある。」実際、研究者たちが特定した7つのトレードオフは「状況による」として定義された。状況に適切かつ注意を払うことで、そのトレードオフは必ずしも現れるわけではない。
海洋目標 (SDG14)は、その他SDGs間で、特に社会資本と気候変動に関して重要なコーベネフィットを示している。(ネレウスレポート参照:Oceans and the Sustainable Development Goals: Co-Benefits, Climate Change and Social Equity)これは、トレードオフが最も少なく、幅広い目標かもしれないが、研究者たちが開発したフレームワークは、全てのSDGsに適用される必要がある。このフレームワークは、様々なSDGを達成するためにガバナンスをどのように変更するかを判断するのに役立ち、国内規模および地域規模のその他の目標にも適用できる。ネレウス研究員たちは、持続可能な海洋開発を支える政策の優先順位付けを支援するために政府と協力しているアルバで、国家規模でSDGフレームワークを適用し始めている。アルバでは、経済の主軸は沿岸観光である。そのため、政府は海洋問題を優先させている。「この論文では、海洋が、いかに他のSDGsを支持するのかを具体的に検討した。アルバでも同じことを行った。そして、逆にその他SDGsが、いかに海洋を支援するのかも考察した。」と Singhは語った。このようにフレームワークを使用することで、持続可能な海洋を支援するためにどのSDG分野を優先すべきかを決定することができ、統合的政策に情報を提供することができる。
「このフレームワークの大きな構想は、持続可能な開発を効果的に促進する統合的政策を確立することである。これら多くのSDGsの達成を実現するために、どのように自然界、社会システム、経済が相互作用するかについて、熟慮が必要となるだろう。より哲学的な視点に戻ると、私はこれら3つの存在を分離させることが不自然だと考える。そのような潜在的に欠陥のあるコンセプトを実行すると、重大な問題を引き起こす可能性がある。私たちが望む未来を実現するためには、それらを全体的に考える必要があるのだ。」とSinghは話す。
Read the full paper here.
UN Oceans Conference: NF-Nereus Program Side Event
The UN Oceans Conference will take place from June 5 to 9, 2017 at the UN headquarters in New York. The conference will be held “to Support the Implementation of Sustainable Development Goal 14.”
At the conference, Nippon Foundation-Nereus Program affiliates will be hosting a side event at the UN Oceans Conference. The event on “The Role of the Oceans in Sustainability: Benefits of Achieving SDG 14 for all Sustainable Development Goals” will be held between 5:00pm and 6:15pm in room 6 of the UNHQ. Nereus Program Director of Policy Yoshi Ota, Program Manager & Research Associate Andrés Cisneros-Montemayor, Senior Fellow Gerald Singh, Principal Investigator Quentin Hanich, Alumnus Wilf Swartz, and Nicholas Institute for Environmental Policy Solutions Ocean and Coastal Policy Program Director John Virdin will be speaking at the side event.
Discussion at this side event will be focused on how research indicates that achieving SDG 14 ocean targets contributes to the achievement of other SDG targets. Such co-benefits of pursuing SDG 14 targets will be considered in the context of our changing ocean due to climate change and social equity. Speakers will be addressing the Call for Action through presentations regarding important marine scientific and legal knowledge to achieve all SDG 14 targets, highlighting existing and future potential for integrated, interdisciplinary and cross-sectoral partnerships to achieve SDGs.
2016年 ネレウスウェブサイトのアクセス TOP10
2016年は、ネレウスプログラムにとって実りある年となった。ネレウスプログラムは、海と漁業に関する素晴らしい研究と話題を提示することができた。ここでは、今年私たちのウェブサイトで最も人気のあった上位10の記事を紹介する。
1.今年のエルニーニョは海と漁業にどう影響するのか?
2015年に投稿された記事ではあるが、2016年も引き続き最も人気の話題となっている。エルニーニョ現象がどのように形成され、どのくらいの期間持続するか、どのくらいの頻度で起きるのか、海洋生態系、漁業、魚種に対するこれらの現象の影響について概説している。
「バンクーバー、北カリフォルニア、オレゴン州、ワシントン州の海岸沖の地域では、マグロ、カジキマグロ、ワフー、マヒマヒのような熱帯種は通常より大量に漁獲されるようになる時がくる。良いことのように思われるかもしれないが、これらの沿岸付近に温水種の存在することは、ここに生存している冷水種が好む条件ではなくなっていることを意味するのだ。」と Ryan Rykaczewski(サウスカロライナ大学助教授/ネレウグプログラム同窓生)は話す。
2.世界の水産補助金(350億ドル)について
OceanCanada、 Sea Around Us、ネレウスプログラムの研究者たちは、世界の水産業は年間350億ドルの政府からの補助金により支えられており、この補助金の大部分(年間200億ドル)が、乱獲等に繋がる漁獲能力拡大の助長に充てられている可能性があると指摘している。Wilf Swartz(ネレウスリサーチ同窓生)へのインタビューで、漁業補助金とは何なのか、そして魚資源に対する補助金のメリットとマイナスの影響は何かの核心を突く。
3.英国のEU離脱(Brexit)は、英国の漁業にどんな影響をもたらすか?政策、科学そして社会が直面する不確実性について
英国が欧州連合(EU)を離れるための国民投票であるBrexitの結果は、多くの人に衝撃を与えた。多くの影響が未だ不明確であり、この投稿では、漁業や海が受ける可能性がある影響について、政策、科学、社会の見解から検討している。政策の観点から、漁業管理、排他的経済水域(EEZ)、海洋保全義務、廃棄禁止、スコットランドの独立性の観点から不確実性が生じる。Brexit により、 科学については、EU全体でなされている研究資金、データ共有、人事をどのように実施していくのか不確実になっている。市場のアクセス、水産物の価格、漁師の生計を含め、社会的影響も起こるだろう。
4. 急進的な未来の海のシナリオを推測するためのSFプロトタイピング
海は、急速に変化している。私たち次第で今後の未来の海が変わる、ちょうどその時に出くわしているのだ。 Andrew Merrie(ストックホルムレジリアンスセンター/ネレウス同窓生)が、SFプロトタイピングと呼ばれる革新的方法を利用して、世界の海と漁業に関する4つの急進的未来を考案している。2つのシナリオは、より理想郷的未来を、残り2つはより暗黒郷的未来を描写している。それらは、異なる方法で、物語様式でスペキュレイティプ(思弁的)・フィクションとして書かれている。例えば、旅行雑誌記事、死亡記事、TEDのようなトークを文字におこしたもの、過去記事を再掲載したシリーズものなどである。この投稿では、4つの画像全てを表示しており、もともとははWired上で発表されたものである。
5. TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は水産物の貿易にどんな影響を与えるのか?
2015年10月、話し合いや意見の相違は続いているが、TPPが大筋合意に至った。この投稿では、水産物の価格は上昇するのか低下するのか、どのように持続可能な漁業管理に役立つのか、重要な海洋種の保全を促進し、違法漁業と戦うのかを含め、協定国12カ国間でTPP が水産貿易にどのように影響する可能性があるかを説明している。
6. Our jelly-like relatives:サルパ類に関する誤認識
「サルパ類は、樽型ゼラチン質動物プランクトンであり、クラゲのように見えるが、クラゲのような触手はもたない。幼生は、人間の背骨によく似た薄い脊索を持ち、我々に一番身近な無脊椎動物の親類と言われる。サルパは脊椎動物の一部である被嚢類の動物であり、人間と同じだ、しかしクラゲは刺胞動物門であり、サンゴと同じである。サルパとクラゲは、8億年前に分岐した異なる祖先を持つ。この2つは、非常に似ているが、全く異なる進化を遂げて来た種である。」とHenschke(プリンストン大学)は説明する。
7. 食卓に並ぶクラゲ〜クラゲ漁はクラゲ大量発生への解決策となるか〜
Natasha Henchkeは、クラゲの繁殖の発生の増加について、そして私たちがクラゲを食するべきかどうかを検証しているクラゲについてこのブログ記事でこのように記述している。
「クラゲの漁獲は、短期間で見ると繁殖する生物量の管理の解決策である。クラゲは、そのライフサイクルが、水底に生息したり漂流する時期を含んでいるので、クラゲ漁はりんごの収穫と類似しているところがある。つまり、一本のりんごの木から全てのりんごをとっても、翌年にはまたりんごを実らせる。同様に、ある場所ですべてのクラゲを取り除くことができたとしても、底生生物のポリプの群生は健全で毎年クラゲの幼生を生み出し続けるのだ。」と記述している。
8. コガシラネズミイルカが絶滅危惧種になったのは漁業の問題だけではなく、社会的、生態学的問題でもある
コガシラネズミイルカは、1996年には600頭が確認されているが、2016年には60頭に激減しており、異常な速さで絶滅の危機に直面している。最大でも1.5メートルにしかならない世界最小の海洋哺乳類だ。黒い目や、死後でさえも笑ったように見える丸い口を持ち、十分に可愛らしい要素を持ち合わせている。世界で最も絶滅に近い海洋哺乳類についてはそれほど知られておらず、1958年までは科学者に記述されることもなかった。コガシラネズミイルカが生息する海域に出航する漁師たちでさえ滅多にその姿を見られない。
絶滅の危機に瀕しているネズミイルカの存在すら知られていないということがなぜ起こるのだろうか。コガシラネズミイルカの生息地で行われている漁業が責められている。刺し網に引っかかり、溺れたことによるものだと考えられるからだ。しかし、Andrés Cisneros-Montemayor (ネレウスプログラムマネージャー/リサーチアソシエイト)は、より大きな社会的、また生態系的問題に影響を及ぼしていると考えている。
9. 南シナ海の不安定さ:生態系における課題と国際政治に関わる複雑な現状
非常に重要な漁業と海洋サービスの地域である南シナ海の領有権をめぐる紛争は、2016年も引き続き起こった。7月、ハーグ国際法廷は、中国が主張するこれらの水域での歴史上の権利主張を却下し、その上でフィリピンに有利な判決を下したさらに、中国が許可なしにフィリピンの管轄海域内で漁業も行う一方で、特定の地域で非合法的に伝統的な漁業権の行使を妨げていたと判断した。
この投稿では、南シナ海の価値、そしてなぜこんなに多くの国々が南シナ海を巡り争っているのかを説明した。南シナ海の生態系や漁業の現在の状態、管理問題についても考察している。
10. 海をイラスト化する:海洋生態系の複雑さを描くための過程
過去数年間に渡り、アーティストJenn Paul Glaserは、複雑な海洋システムを描いたユニークなイラストを制作している。ここでは、これらの素晴らしい作品を作るためにたどった過程や使用した道具について説明している。
2017年も引き続きネレウスプログラムをよろしくお願いいたします。
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海洋漁業の世界地図
Sea Around Usは、過去10年間で、特に漁獲30%が無報告であることを突き止め、世界の漁獲に関するより正確な見解を構築してきた。Daniel Pauly とDirk Zeller率いる、273カ国からの400人の研究者たちによる研究成果が、Global Atlas of Marine Fisheriesと題した520ページの本に編集された。
この本は、国別漁業データだけでなく、経済学、公海、養殖、および汚染物質を含む世界の漁業問題に取り組んだ章から成る。ネレウスプログラムディレクター、フェロー、同窓生が、地図帳や章の執筆に参加。Daniel Paulyは、ネレウス運営委員会議長、 諮問委員会委員でもある。
2017年1月6日まで、世界中で入手可能。価格$60。Island Pressの読者は、コード「4ATLAS 」で20%ディスカウント。
Nereus Program contributions were made to the following chapters:
Chapter 3. Global Catches of Large Pelagic Fishes, with Emphasis on the High Seas \ F. Le Manach, P. Chavance, A. Cisnero-Montemayor, A. Lindop, A. Padilla, L. Schiller, D. Zeller, and D. Pauly
Chapter 4. The Distribution of Exploited Marine Biodiverisity \ M.L.D. Palomares, W.W.L. Cheung, V.W.Y. Lam, and D. Pauly
Chapter 5. The Sea Around Us Catch Reconstruction Database and Its Spatial Expression \ V.W.Y. Lam, A. Tavakolie, M.L.D. Palomares, D. Pauly and D. Zeller
Chapter 6. The Economics of Global Marine Fisheries \U.R. Sumaila, A. Cisnero-Montemayor, A.J. Dyck, A.S. Khan, V.W.Y. Lam, W. Swartz, and L.C.L. Teh
Chapter 8. Global-scale Responses and Vulnerability of Marine Species and Fisheries to Climate Change \ W.W.L. Cheung and D. Pauly
Chapter 9. Modelling the Global Oceans with the Ecopath Software Suite: A Brief Review and Application Example \ M. Colleter, A. Valls, V. Christensen, M. Coll, D. Gascuel, J. Guitton, C. Piroddi, J. Steenbeek, J. Buszowski, and D. Pauly
Chapter 13. Pollutants in the Seas Around Us \ S. Booth, W.W.L. Cheung, A.P. Coombs-Wallace, V.W.Y. Lam, D. Zeller, V. Christensen, and D. Pauly
国際海洋保護区会議 (IMCC4)
国際海洋保護区会議(IMCC) がカナダのニューファンドランド島、セントジョーンズにて7月30日〜8月3日に開催された。この会議には、「今後の海洋保護科学と政策への新しく強力なツールを開発する」ために海洋保護の専門家と学生を結集した。「海洋科学は重要な意味を持つ」をテーマに、今年の会議では、政策立案者や利害関係者に影響を与えるための戦略に対処し、海洋食料安全保障、海洋科学技術、海洋政策など、興味のあるいくつかのトピックに分割した議論が展開された。
ネレウスプログラムの研究者たちがこの会議に参加しプレゼンテーションを行った。 Daniel Dunn(デューク大学/シニアネレウスフェロー)は、「世界の他50%を保護:管轄権を超えた地域の保全での事情と機会」という題目で2日間の事前会議フォーカスグループを催し、国家管轄権外海域における生物多様性(BBNJ)準備委員会プロセスを取り扱ったした。Dunnはまた、2030年までに世界の海洋生物地理学的地域それぞれの中で強調保全のための特定の領域に優先順位をつけることにより、海洋生態系の保全に向けての活動に拍車をかけるための設計構想「グローバル海洋保護区システム(GLORES)のための強固な基準を開発」にと題する事後会議フォーカスグループの開催に関わった。
国際海洋保護区会議(IMCC)への参加者
William Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学、Patrick Halpin (デューク大学/j研究責任者)、 Miranda Jones (UNEP-WCMC/ネレウス同窓生)、Andrés Cisneros-Montemayor (ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスフェロー)、Daniel Dunn (デューク大学/ネレウスフェロー)、Gabriel Reygondeau (ブリティッシュコロンビア大学)、Vicky Lam (ブリティッシュコロンビア大学)、Guillermo Ortuño Crespo (デューク大学)
以下、ネレウスとの提携プレセンテーション
Andrés Cisneros-Montemayor – “Impacts of ecotourism on conservation and resource management at local and global scales”
Andrés Cisneros-Montemayor, Vicky Lam, Gabriel Reygondeau, Wilf Swartz, Yoshitaka Ota – “Links between human conflict and marine ecosystem health”
Vicky Lam, William Cheung, Rashid Sumaila, Gabriel Reygondeau, Andrés Cisneros-Montemayor, Wilf Swartz – “Future projections of global and regional marine fisheries catches”
Vicky Lam – “From marine ecosystem transformation to human nutritional outcomes: insights from Bangladesh”
Lauren Weatherdon, Yoshitaka Ota, Miranda Jones, William Cheung – “Projected scenarios for coastal First Nations’ fisheries catch potential under climate change: implications for management and food security”
Daniel Dunn, Guillermo Ortuño Crespo – “A review of the impacts of fisheries on open-ocean ecosystems”
Patrick Halpin – “Results, implications and future directions of the first intergovernmentally sanctioned effort to describe ecological or biologically significant areas (EBSAs)”
Daniel Dunn – “The call for MPAs in areas beyond national jurisdiction: identifying real needs and false assumptions”
Daniel Dunn – “Conserving the other 50% of the world: status and opportunities in area-based management beyond national jurisdiction”
Andrés Cisneros-Montemayor, William Cheung – “Evaluating biodiversity targets in marine ecosystems: a fuzzy logic framework”
Global Fishing Watch Research Workshop with Google Earth Outreach
The Nereus Program will present at the Global Fishing Watch Research Workshop on June 6th and 7th at Google’s offices in San Francisco, California, United States. In attendance will be Nereus Director (Policy) Yoshitaka Ota, Director (Science) William Cheung, Program Manager Wilf Swartz, PI Pat Halpin, and Nereus Fellows Gabriel Reygondeau (UBC), Daniel Dunn (Duke) and Guillermo Ortuño Crespo (Duke).
Global Fishing Watch is a technology-based partnership that started between digital mapping non-profit SkyTruth, oceans advocacy foundation Oceana, and Google’s Google Earth Outreach program, “designed to show all of the trackable fishing activity in the ocean” via an interactive web tool. With the goal of combating fisheries decline, the project will “reveal the intensity of fishing effort around the world” and help citizens hold world leaders accountable for the maintenance of an abundant ocean.
The partnership is holding the workshop with the aim to coordinate efforts across its research program, particularly the research’s policy implications, by identifying high conservation impact research projects and their potential bearing on policy. The workshop will also serve as an opportunity for participants to share relevant data, research methods, and tools, as well as discuss future collaborations.
Google Earth OutreachとGlobal Fishing Watch 研究ワークショップ
ネレウスプログラムは、6月6、7日の両日、アメリカ、サンフランシスコにあるGoogleオフィスで開催されたGlobal Fishing Watch 研究ワークショップ(ネレウスプログラム共催)に出席した。
Global Fishing Watchは、デジタル地図作成を行っている非営利組織のSkyTruthと海洋保全イニシアチブ Oceana Google Earth Outreachプログラムが始めたテクノロジーベースの共同事業で、対話型ウェブツールを介して「海におけるすべての漁業活動を追跡するサイト」である。衰退する漁業と立ち向かうことを目的に、このプロジェクトは「世界中でいかに漁業努力が為されているかを明らかにし、市民が豊かな海を維持するために必要とする、責任ある世界のリーダーの登場を導く」事を目的としている。
Yoshitaka Ota(ネレウス統括・政策)、William Cheung(ネレウス統括・科学)、Wilf Swartz(ネレウスプログラムマネージャー)、Pat Halpin(研究責任者)、Gabriel Reygondeau (UBC/ネレウスフェロー)、 Daniel Dunn (デューク大学/ネレウスフェロー)、Guillermo Ortuño Crespo((デューク大学/ネレウスフェロー)が参加。
この共同事業が、保全に関して影響力を発揮する研究プロジェクトであり、政策に関しての将来性もあるということを認識することにより、研究分野を超えた協力、特に研究の政策的意味合いを調整するという目標で今回のワークショッップが開催された。このワークショップは、参加者にとって、関連データ、研究方法、ツールを共有したり、将来のコラボレーションについてを話し合ったりする機会となった。
この2日間で、AIS Fishing Algorithm、船舶識別と登録に関する課題、ABNJ (国の管轄外の地域)や国家管轄内での海洋環境影響および漁業と海洋環境の関連性(漁船の動きと魚の動きの関係)についての議論とプレゼンテーションが行われた。
本日の魚:なぜ水産物の旬は問題なのか
By Wilf Swartz(ネレウスプログラムマネージャー/リサーチアソシエイト)
季節ごとの食べ物を日本語では「旬」と言う。旬とは、ある特定の食べ物が、最も味の良い出盛り期のことである。現代社会では、多くの食べ物に「季節」を感じる事はあるが、残念ながら欧米では魚に季節を感じる事は少ない。「旬」を魚には感じる事が少ないのだ。いろいろな食べ物を旬の時期以外に味合うことができるが、 その食べ物から連想されることは変わらない。 いちごは初夏を、かぼちゃ、特にパンプキンパイや芽キャベツからは、落ち葉の音や七面鳥や感謝祭を連想する。そう、七面鳥には季節性があるのだ。中世には、寒い冬の夜に燃え盛る火の上でシカ肉が代わりに焼かれていたかもしれないが。言い切れないほどまだまだあるが、水産物は違う。ほとんどの水産物がなぜかその対象から外されているのだ。
海の恵みに関して言えば、ニシン、タラ、マグロを食すのに最も適した時期、または適さない時期はいつなのだろうか。私たちは、魚を季節のものとして捉えなくなってしまった。
そして、カナダの他の都市に比べ、魚や漁業とより調和しているバンクーバーに住んでいると多くの人に見られる傾向なのだが、ほとんどの人がサーモンはいつが旬なのかに気づいている。それなのに、旬とはかけ離れた2月中旬に、地元の寿司レストランでサーモン巻き寿司を注文することをためらう人はまずいないだろう。
私たちの水産物消費は、「本日の魚」から「いつでも手に入る魚」 になってしまい、季節に関係していない。
実際には、水産物に旬がなくなったわけではない。事実、自然が供給する数少ない食料源である魚は、間違いなく他の主要食料源よりもその生産性に季節変動の影響を受け易い。単に私たちにとって、季節感がなくなる数ある理由を見逃すほうが都合がいいのだ。
水産資源は、地元の漁場を出たり入ったりと回遊する。地元で大漁の時もあれば、不漁の時もある。産卵期には、魚体に科学変化を起こす(例:脂肪分の減少)ので、風味は年を通して異なってくる。しかし、今では、冷凍技術の発展と世界の物流ネットワークの拡大により、小売市場は一年を通して、世界の至る所まで、特定の魚種(またはそれに近い魚種)を供給できる。実際には、これが地元漁業での季節的変動を覆い隠してしまうわけである。水産物消費は、「本日の魚」から「いつでも手に入る魚」となり、季節感を無くしてしまう。
しかし、旬の水産物を食べることには利点がある。
生態学的に言えば、旬の魚に執着すると、ターゲットにする魚種を多様化し、基となる海洋生態系のいたるところに漁業の影響をまんべんなくばらまくことが出来る。近年、提案されてきているそのような釣り合いの取れた収穫戦略により、持続可能な漁業を支持するという点でも、漁業のネガティブな生態系への影響を和らげるのに役立つだろう。
経済に関して言えば、旬の魚を消費することで、漁獲ピーク時に供給過剰となり値崩れする可能性を和らげる。漁業が、不良期に蓄積される繰り延べ需要を利用することが出来る状況を作り出すことで、大漁期の追加供給は追加需要に吸収される。ここで、ブリティッシュコロンビア州のボタンエビの例が思い浮かぶ。
漁業で対象にする魚種の「ポートフォリオ」を多様化することで、漁業が特定の資源の変動にうまく対処し、専門漁業に含まれる固有の危険を和らげるのに役立つだろう。さらに、旬の水産物の販売促進キャンペーンにより、「主流」の物ではなく、現在は混獲として扱われる魚を新しくマーケティングする機会を生むこととなり、多種漁業の経済を強化するだろう。
では、家庭レベルにはどんな利益を生むだろうか? 旬の地元水産物を消費に移行することで、必然的に地魚の消費につながる。それが地元の漁業コミュニティーに良い影響をもたらすことになるだろう。小規模の漁業操業は、一年を通して季節ごとに対象にする種を変えたり、漁業のための索具を変えるなど柔軟である必要があるが、エネルギー効率が良く生物的持続可能性であると一般的に認知されている。遠洋で操業し、対象にした魚種の移動を追うよりも、漁師の社会経済的状況を高めるので、船舶が地元の漁場近くで操業する。まさに、地産である。
問題は、私たちの購買や食習慣によって、旬の水産物に戻る大きな漁業転換を促進できるかということだ。
OceanWise や Seafood Watch のような「旬」の消費者ガイドがスタートとなるだろう。そして、旬の水産物キャンペーンが実行できるのか、また持続可能な漁業促進の効果を確実により詳しく調査する必要がある。
しかし、きっと最善の解決策は、科学とは関係ないことなのかもしれない。そう、これら左脳派と右脳派もしくは私たちが冗談まじりに「無能派」と呼ぶ人たちが解決の重要な役割を担うのかもしれない。つまり、旬の物を食べるということはすばらしい、と、感情レベルで人々に本能的に訴えるというコンセプトである。そして、メッセージは、「生態的メリットのために旬の魚を食べよう」ではなく、「我々の心理的メリットのために旬の魚を食べよう」とすべきだ。言い換えれば、旬の物を食べると気分があがる、なぜなら季節に寄り添いながら生きる事はが気分がいいことだから。
旬の魚を今一度、社会的意識と地元の食に取り入れる時が来ているのだ。
ウィルフ・スワーツ博士, 漁業経済
ネレウスプログラムマネージャー/リサーチアソシエイト
現在の研究では、水産物のサプライチェーンに焦点を当てる。また水産業のCSRポリシー、養殖の持続可能性、傷みやすいという制限がある場合の価格設定メカニズムのモデル化(例:日本の鮮魚市場)の研究を行っている。