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違法漁業との戦いにおける新技術と新たな提携

Written By Katy Seto, Nereus Program Fellow

毎年230億ドル相当、2,600万トンもの水産物が違法に捕獲され、規制されず、報告 されていない。国連食糧農業機関によれば、これは「世界の海で持続可能な漁業を 強化するあらゆる努力に対する大きな脅威」である。 最近の報告書では、違法・無 報告・無規制(IUU) 漁業が予想より多く横行しており、 世界の魚資源の85%以上が 不正な漁業活動における重大なリスクに晒されていることが明らかになっている。

世界の漁業資源の90%が完全漁獲または過剰漁獲と見られており、 IUU漁業に伴う 生態学的および経済的損失は、漁業政策会談の緊急課題となっている。この目標を 達成するために、世界のリーダーたちは、持続可能な開発目標14を採択した。 「 Life Below Water”(SDG14) 海の豊かさを守ろう」:「2020年までに効果的に漁獲 を規制し、過剰漁獲、違法・無報告・無規制漁業および破壊的漁業の慣行を排除す る」ことに取り組んでいる。さらに、2016年6月、 違法・無報告・無規制(IUU)漁 業の防止、抑制、廃絶のための寄港国措置協定(PSMA協定)が、 違法漁業に特化 した初めての拘束力のある国際条約を創設した。

日本は、将来に向けて水産資源の持続可能性を確実にする重要な役割を担ってい る。日本は、水産物輸入国の第3位であり、 水産物生産国の第5位である。また、 日本人一人当たりの魚消費量は世界平均の3倍である。この国における水産物の重 要性を考慮すると、 日本は、魚資源の保全に向けた地域の取り組みにおいて主導的 役割を果たしてきており、近年では、 中西部太平洋まぐろ類委員会な どの地域漁業 管理機関における確固たる保全対策のための努力を推進している。日本は、昨年始 まった 規制改革推進会議の元、 重要な国内漁業改革プロセスの途上にある。改革は 水産物のトレーサビリティに取り組み、不正な漁業活動に対処する手はずだ。世界 の水産物の供給と需要の両方に持続可能な役割を鑑みれば、これらの問題における 日本の政治的リーダーシップはIUU漁業に取り組む上で不可欠である。

ネレウスプログラムとウーロンゴン大学 オーストラリア国立海洋資源安全保障セン ター(ANCORS)は、 日本の水産研究教育機関(FRA)およびグローバル・フィッ シング・ウォッチ( GFW) と協力して 「漁業、データおよびサテライト技術:IUU漁 業に対抗するためのイノベーション」(脚注1)という専門家の技術ワークショップ を共同開催した。3日間のワークショップの中で、IUU漁業に取り組む技術者が最先 端技術について議論し、現在および今後の応用の見込みについて話した。

例えば、 Chris Elvidge( NOAA国立環境情報センター)は、沖 合 での集魚灯漁法を 監視するために 、可視および赤外線画像と海洋の放射能測定値を収集することがで きる Visible Infrared Imaging Radiometer Suiteを使用する可能性を示した。

Jaeyoon Park、 Nate Millerおよび Katherine Setoによる研究では、遠隔検知自動識 別システム(AIS)船舶データ(船舶の身元確認、位置、進路、スピードが分かる船 舶の追跡システム)型グローバルの船舶動向を追跡し、積み替えを確認し、地域の 漁業管理や政府が不正漁業活動を特定するのに役立てることを提案した。水産物製 品は、地球上で最も多く取引されているものであり、遠い沖合に拠点を置くグロー バル漁業は、監視し、取り締まるのが難しい。これらの活動を浮き彫りにするため の遠隔検知データを使用する新技術により、管理者がグローバル漁業を監視し、 透 明性と持続可能性を査定する素晴らしい手段を得ることができる。この専門技術 ワークショップで、日本の機関およびパートナーが発表した研究では、IUU漁業に 取り組むにあたり、非常に有望な最先端のリモートセンシング技術について説明さ れた。

技術ワークショップに続き、WWFジャパン、シーフードレガシー(Seafood Legacy)、 セイラーズフォーザシー (Sailors for the Sea)、グリーンピースジャパ ン( Greenpeace Japan)、 オーシャンアウトカムズ( Ocean Outcomes)、 Traffic 、 ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシー( the Nature Conservancy) などの日本の 団体の協力で 報道関係者、非政府組織(NGO)、及び一般市民とのパブリックセミ ナーを開催した。専門家達が、初期の研究結果について発表し、この研究が漁業政 策や管理にいかに情報を提供できるかについての質問に答えた。また、 国立研究開

発法人 水産研究・教育機構(FRA)理事長の宮原 正典氏が、太平洋全域での研究、 訓練の相互協力を続けるためにFRA、ANCORS及びGFWの協力協定を発表した。こ の協定により、すべての関係者が 漁業管理と持続可能性の問題を解決するための最 先端の技術を適用することが可能になり、最終的には日本国内で、地域的または国 際的に政策改革につなげることができるだろう。

脚注:1) FRA、JFA、JAXA、JAFIC、ANCORS、Pew Charitable Trusts、NOAA、 GFWが参加

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