Tiff-Annie Kenny(オタワ大学/ネレウスフェロー)とTad Lemieux(カールトン大学/博士研究員)は、 イヌイットの食糧安全保障、健康、生計に悪影響を及ぼす恐れがある最近のロケット打ち上げについて考察した論文を発表、The Conversation誌面に掲載された。
欧州宇宙機構(ESA)は、10月13日に衛星を軌道に打ち上げた際、カナダとグリーンランドのイヌイット族指導者から重要な北極域を汚染する可能性があると抗議があったにも拘わらず実行された。
全てではないにしても、ロケットの有毒な燃料のほとんどは、打ち上げ中に燃え尽きる。ロケットの第2段階が離陸して地球に落ちたとき、ヌナブトとグリーンランドの間のバフィン湾北部北海ポリニアに「意図的に沈殿させる」未燃焼ヒドラジン燃料を最大1トン含んでいる可能性がある。
ポリニア、イヌクティトゥト語で Pikialasorsuaqは、海氷に囲まれた海水域である。イッカクやアシカのような北極圏の種にとって重要な生息域であり、北極で最も生物学的に生産的な地域の一つである。そこで漁や狩りをするイヌイットコミュニティにとって食料供給の重要な部分としても考えられている。
打ち上げ前、グリーンランドの前首相Kuupik Kleistが、Pikialasorsuaqに危険なロケット燃料を沈殿させるのは「容認できない」と呼びかけた。
今月上旬に掲載された研究によると、2002年から同様な打ち上げが少なくとも10回、Pikialasorsuaqやバレンツ海、ノルウェイの北沿岸、ロシアに、切り離されたロケットが廃棄された。
先住民族の権利に関する国連宣言第29条では、国々は危険性物質が同意無しに先住民領土に廃棄処分されないようにする必要があると主張する。しかし、先週の打ち上げでは以前の打ち上げのように、イヌイットに事前の相談がなかったのだ。
イヌイットにとって、ロケットの打ち上げは地政的関係の限界を超えている。食料の安全性や食糧安全保障に対する懸念をより深刻なものにする。また、先住民の食物の権利を含め、現代のカナダでの先住民族の権利について緊張が高まっている。
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